ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

JR西日本三江線、2018年4月1日に廃止へ

2016年09月30日 23時40分46秒 | 社会・経済

 夕方に時事通信社のサイトを見たら、18時17分付で「三江線、18年4月廃止=国交省に届け出-JR西」(http://www.jiji.com/jc/article?k=2016093000792&g=eco)という記事が掲載されていました。

 このブログでも三江線の話題を何度か取り上げていますが、同線の2014年度における輸送密度が1日50人程度で、JR西日本発足時(1987年)の9分の1となっているのでは、どうしようもないというところでしょうか。岩泉線が廃止されてから、JR各社の路線で輸送密度が最も低い路線であり、これでは鉄道の特性を生かせないと評価されるところでしょう。108.1キロメートルという長大な路線で、1980年代の特定地方交通線では天北線、名寄本線、羽幌線、標津線、池北線(この路線だけは第三セクター鉄道に転換。但し、既に廃止)と言ったところを思い起こさせますが、いずれも北海道の路線であり、その頃には北海道以外で100キロメートルを超える路線が廃止されていません。本州において、100キロメートルを超える鉄道路線が廃止されるのは、三江線が初のケースとなります。

 これまで、JR西日本は沿線自治体、広島県および島根県と協議を重ねていたようですが、結局、2018年4月1日に廃止することを国土交通省に届け出ました。今後は代替交通の問題に移ることとなります。

 ただ、私自身も疑問に思っていますし、地元でも同様ではないかと考えらえることがあります。三江線は、開業以来、自然災害のために何度か不通や全線運休になっており、その度に復旧されてきました。「三江線は廃止されるか」でも記しましたが、2013年8月24日の大雨による全線運休からおよそ11か月ぶりに、つまり2014年7月に、10億円以上の費用をかけ、全線で運転を再開したのは何であったのでしょうか。2014年の輸送密度については、この運休期間を考慮に入れなければならず、それは2013年度についても同様ですので、2012年度の輸送密度などを念頭に置かなければならないでしょうが、2012年度から2015年度にかけて急激に業績が悪化したとは考えられません。2010年の10月から12月まで、社会実験としてバスを増便しましたが、その時でも1日平均の利用人員は226人しかいません。また、2014年度の営業収益が2300万円程度だったとのことですが、長期運休期間がなかった2012年度の営業収益も、おそらくは1億円を超えていないでしょう。2014年度より少々よかった程度ではないかと考えられます。

 上記時事通信社記事では、廃止の理由としてJR西日本が説明したものが示されていますが、どれを見ても「何故、今更?」、「遅すぎた」などとしか思えません。記事を引用してみましょう。

 「『拠点間を大量に輸送する』という鉄道の特性を発揮できない」

 「通院、買物など市町内で完結する少量かつ多様な移動が実態であり、鉄道が地域のニーズに合致していない」

 「三江線活性化協議会において、5カ年の取り組みにもかかわらず、利用者の減少に歯止めがかかっていない」

 「自然災害リスクの高まりは当線区においても無関係でなく、バスにて代替可能な鉄道に対し、被災と復旧の繰り返しは社会経済的に合理的でない」

 いずれも、三江線に固有の事情ではなく、全国の地方交通に共通する事柄であると言えますが、最後にあげられた自然災害リスクが、私に「何故、今更?」あるいは「遅すぎた」と思わせたのです。同線については「社会経済的に合理的でない」という「被災と復旧の繰り返し」が何度も行われてきました。雪を除けば、鉄道は災害に弱いということを鉄道会社自身が認めたことにもなります。

 また、自然災害云々を言い出すならば、三江線に限らず、ほとんどの鉄道路線につながる話です(勿論、利用人員数、運営会社の資本力などとも関係します)。今後、自然災害の被害を受けた鉄道路線が、運休の後、復旧は「社会経済的に合理的でない」として廃止されることが多くなるでしょう。少なくとも、JR西日本はこの理屈を前面に出し、今後は「選択と集中」の方針を打ち出したと考えてよいでしょう。沿線自治体も覚悟を決めた方がよさそうです。つまり、赤字ローカル線については、やみくもに存続を訴えるのが無意味であるということです。夕張市のように「攻めの廃線」を主張することができる所は少ないかもしれませんが、赤字額を増幅させる存続を前提とするのではなく、廃線を前提とした「その後」を考え、備えておく必要がある、ということです。

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この最高裁判所判決の意味、おわかりになるでしょうか?

2016年09月25日 10時55分07秒 | 法律学

 明日(9月26日)の講義で配布する予定のプリントの中身から。

 最三小判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁(名古屋医師財産分与事件)が財産分与と所得税(譲渡所得)との関係について、遠藤みち『両性の平等をめぐる家族法・税・社会保障』(2016年、日本評論社)60頁の言葉を借りるならば「一般的にはわかりにくい判断」を示しています。或る意味では粋な判断ではありますが、いかがでしょうか。

 1.事案

 Xは医師で、Aと婚姻関係を結んでいたが、名古屋家庭裁判所で離婚調停を行っていた。この調停の結果として、Xは、名古屋市内に所有していた本件土地と建物をAに「慰謝料」として譲渡した。Xは昭和42年分所得税について確定申告を行ったが、この「慰謝料」としての譲渡については申告をしていなかったため、所轄の名古屋中村税務署長は昭和43年9月30日付で譲渡所得金額を148万8877円などとする更正処分を行った。そのため、Xは、本件については自身が何らの所得も得ていない、調停では「慰謝料」となっているが当初は「財産分与」を意図していたのであり、実質は「慰謝料」ではなく「財産分与」である、などと主張し、名古屋中村税務署長に異議申立てをしたが棄却され、名古屋国税局長に対して審査請求をしたがこれも棄却された。Xが出訴。

 2.争点

 ・本件土地および建物の譲渡が「慰謝料」としての性格を有するならば、Xに譲渡所得が発生するのか。

 ・本件土地および建物の譲渡が「財産分与」としての性格を有するならば、Xに譲渡所得が発生するのか。

 3.判旨(太字および下線は、すべて引用者による。また、表記を変えた部分がある。)

 (1)名古屋地判昭和45年4月11日行集22巻10号1685頁

 本件の事実認定等によると、本件土地および建物は「調停によりXよりAに慰藉料として譲渡せられたことを認定しうる。X本人尋問の結果によると右各不動産は財産分与として譲渡すべく話合われたことは事実なるも双方協議の末右の如く慰藉料とせられたことも明らかであり、(中略)調停調書上明白に慰藉料として記載せられた以上これをもって慰藉料にあらずして財産分与なりと論ずるのは誤りであ」り、本件土地および建物の譲渡は譲渡所得に該当する。

 (2)名古屋高判昭和46年10月28日行集22巻10号1679頁

 「譲渡所得に対する課税の本質は資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものと解すべきであり、売買交換等によりその資産の移転が対価の受入れを伴うときは、右増加益は対価のうちに具体化されるので、これを課税の対象としてとらえたのが旧所得税法第9条第1項8号(現所得税法第33条)の規定である」(最一小判昭和43年10月31日集民92号798頁を参照)。

 「右にいう資産の移転が対価の受入れを伴う場合としては売買、交換等現実に対価を受入れる場合の外慰藉料その他債務の履行として或は債務の履行に代えて資産の移転がなされる場合も含む」と解すべきである。「けだし一般に債務の履行として或は債務の履行に代えて自己の有する資産を相手方に移転譲渡した場合にはその譲渡時における当該資産の価額に相当する額の弁済があつたことになり、これによつて当該債務は消滅するのであるから、経済的利益を享受しこれが具体化した点では現実に対価の受入れを伴う場合と実質的に何等変りはないからである」。本件土地および建物は「現金1450万円等と共にAとの離婚に基づく慰藉料及び財産分与として譲渡することを約定しその履行として譲渡されたものであること前に認定したとおりであるから、右のように慰藉料及び財産分与に基づく債務の履行として本件不動産の譲渡がなされた以上」、本件の譲渡が譲渡所得に該当すると解するのが相当である。従って、本件土地および建物の「譲渡が慰藉料又は財産分与の履行或はその双方の履行と解せらされるとしても、何れにせよ所得税法第三三条第一項に所謂譲渡所得ありとしてなされた本件更正処分(中略)は適法であ」る。

 (3)最三小判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁

 「譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものであるから、その課税所得たる譲渡所得の発生には、必ずしも当該資産の譲渡が有償であることを要しない」(最三小判昭和47年12月26日民集26巻10号2083頁を参照)。従って、「所得税法33条1項にいう『資産の譲渡』とは、有償無償を問わず資産を移転させるいつさいの行為をいうものと解すべきである。そして、同法59条1項(昭和48年法律第8号による改正前のもの)が譲渡所得の総収入金額の計算に関する特例規定であつて、所得のないところに課税譲渡所得の存在を擬制したものでないことは、その規定の位置及び文言に照らし、明らかである」。

 「夫婦が離婚したときは、その一方は、他方に対し、財産分与を請求することができる(民法768条、771条)。この財産分与の権利義務の内容は、当事者の協議、家庭裁判所の調停若しくは審判又は地方裁判所の判決をまつて具体的に確定されるが、右権利義務そのものは、離婚の成立によつて発生し、実体的権利義務として存在するに至り、右当事者の協議等は、単にその内容を具体的に確定するものであるにすぎない。そして、財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがつて、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによつて、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。」

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秋の夜、溝口三丁目・四丁目(6)

2016年09月24日 00時00分00秒 | まち歩き

高津小学校前交差点に着こうとしています。写真の右側、信号機の手前側が四丁目で、奥は五丁目です。左側は三丁目が溝口交差点まで続きます。

 川崎市内では府中街道と言われる国道409号を歩いてきましたが、この先、よく「にいよんろく」と言われる国道246号と交差する溝口交差点が、国道409号の起点となっています。そこから先、登戸、稲城方面は神奈川県道・東京都道9号川崎府中線です(実は幸区内から溝口交差点まで、国道409号と神奈川県道・東京都道9号が重複しています)。

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秋の夜、溝口三丁目・四丁目(5)

2016年09月23日 00時00分00秒 | まち歩き

高津区では最古の小学校、高津小学校のそばです。歩道橋の手前側が四丁目(高津小学校のほう)、奥が三丁目です。

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秋の夜、溝口三丁目・四丁目(4)

2016年09月22日 00時00分00秒 | まち歩き

 国道409号と県道14号鶴見溝ノ口線との交点、高津交差点です。東急バスおよび市バスの高津バス停もこの近くにあります。県道14号の終点がこの交差点であり、ここから二子神社方面は県道となっていません。

 

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秋の夜、溝口三丁目・四丁目(3)

2016年09月21日 00時00分00秒 | まち歩き

帝京大学医学部附属溝口病院の斜め向かい、四丁目にあるコインパーキング(但し1階のみ)です。

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秋の夜、溝口三丁目・四丁目(2)

2016年09月20日 00時17分25秒 | まち歩き

溝口三丁目にある、帝京大学医学部附属溝口病院です。現在、田園都市線をはさんで反対側、二子五丁目に新しい病棟などを建設しており、移転する予定です。

昨年夏から今年の冬にかけて、一体何度入ったことか。しかも、真夜中を過ぎてから行き、早朝に帰ってきたこともありました。

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秋の夜、溝口三丁目・四丁目(1)

2016年09月18日 21時47分13秒 | まち歩き

 高津駅から国道409号を西へ進めば、すぐに溝口三丁目(南側)・四丁目(北側)です。ここを歩いて、何となく撮影した写真を掲載しておきます。カメラは、ソニーのサイバーショットDSC-WX350です。

 溝口三丁目、帝京大学医学部附属溝口病院のすぐ近く、高津警察署のほぼ真向かいにある喫茶店です。クラシック音楽が流されるところで、川崎市では有名な喫茶店と言えます。私も時々入っては、コーヒーを飲んだりしています。味も雰囲気もいいものです。

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筑波大学ビジネス科学研究科法曹専攻「地方自治法」の期末試験について

2016年09月13日 23時26分45秒 | 受験・学校

 私は、今年の8月27日より今月24日まで「地方自治法」の講義を担当しております。その期末試験の日程が決まりましたので、ここに記しておきます。

 9月28日(水)、19時から20時まで、504講義室にて。

 参照は一切不可(但し、参照条文が必要な場合には、当方で用意します)。

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堺市が支出した補助金について、公益性を認める判決

2016年09月08日 22時00分00秒 | 法律学

 先程、朝日新聞社のサイトを見たら、21時14分付で「シャープ堺工場への補助金、公益性認める判決 大阪地裁」(http://www.asahi.com/articles/ASJ984H4CJ98PTIL00S.html)という記事が掲載されていました。

 あまり詳しくない記事ですが、記事によると、大阪府と堺市は、シャープが同市に液晶パネル工場を建設した際に、シャープ、大日本印刷、凸版印刷など6社に対し、補助金の支出や地方税の減免措置を行いました。これに対し、市民団体がおよそ178億円の返還を求める住民訴訟を提起しました。この訴訟に対する判決が、今日、大阪地方裁判所から出されたのです。

 判決は、原告敗訴でした。シャープが遊休地に進出して、法人府民税などが増加したなどとして、大阪府と堺市の財政支援に公益性が認められる、という趣旨の判断のようです。

 裁判所の公式サイトか何かに判決が紹介されるでしょうか。読んでみたいものです。

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