東京電力福島第一原発事故による被災者らが、東電を相手に原状回復や慰謝料などを求めた集団賠償訴訟の原告数が1万人に達する見通しになった。政府が事故後に決めた枠組みに沿って東電が被災者に賠償金を支払っているが、これに納得できない被災者が多数いることを示している。

 訴訟を支える「原発事故被害者支援・全国弁護団連絡会」によると、原告数は4月末現在で計9992人に達した。今年に入っても約900人増えており、1万人超えは確実だ。ほとんどの訴訟が国家賠償法に基づいて国も訴えている。

 これまでの公害裁判では、沖縄県の米軍嘉手納基地の周辺住民が2011年に騒音被害などを訴えた第3次訴訟の原告数が2万人を超える。福島の原発事故をめぐっても異例の大規模な集団訴訟となる。

 原告は避難指示区域からの避難者や区域外の自主避難者、住民ら。福島県双葉郡などからの避難者が2012年12月に起こしたのを皮切りに、札幌から福岡まで20地裁・支部で25件の裁判が起こされている。政府は早期帰還を促すとして避難指示区域を縮小し、解除した区域の住民への慰謝料を打ち切る方針で、これを不服とする提訴も今後、増えそうだ。

 原発事故の賠償をめぐっては、政府の原子力損害賠償紛争審査会が賠償の指針をまとめ、それに沿って東電は、避難生活への慰謝料や、不動産、営業損害などの賠償金を支払ってきた。しかし、集団訴訟の原告らは、これに納得せず、放射線量率が下がるまでの慰謝料や、「ふるさと喪失」への慰謝料などを求めている。

 裁判で原告側は、東電が安全確保に「必要な対策をとらなかった」などと過失を主張しているのに対し、東電は「(東日本大震災の)地震・津波の予測は不可能であった」などと否定している。国も安全確保に「行政指導などの措置を講じてきた」などと争う構えだ。双方の主張の隔たりは大きく、結審まで、まだ時間がかかりそうだ。(編集委員・小森敦司)

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