小田原周辺のマイナースポットや些細な出来事を少しずつ
小田原の端々



小学生の頃、新学期が始まってまもなく級友が、家からグッピーの入った水槽を持ってきてクラスで飼育することになった。水槽の中を見ると綺麗な尾ビレをゆらゆらとさせて小魚が泳いでいた。グッピーを見たのはこのときが初めてだったが、級友に聞けばグッピーが獲れる小川が小田原市内にあるとのこと。グッピーがいる小川が市内にあると知ってどんどんと行ってみたい気持ちが大きくなり、その年の夏休みに級友と連れ立って出かけたのが明治製菓裏の排水路だった。酒匂川右岸の富士道橋から上流方向へを300mほど進むと、サイクリングコース脇に明治製菓のバイオサイエンス研究所が見えてくる。研究所裏手には排水路があり、かつてその排水路にはグッピーが生息していた。酒匂川サイクリングコースはランニングやポタリングなどで現在も良く通っているが、先日、明治製菓の裏手を通った際に、ふとグッピーの事を思い出して、明治製菓裏手の土手下へ降りた。以前はフェンス沿いの結構長い区間に排水路があったように記憶しているのだが、現在では土に覆われていて排水路らしきものは見当たらない。現在の排水路は研究所南側から敷地に沿って数十メートルほど下流へ流れた後に、他の水路と合流している。熱帯魚のグッピーが生息している小川なので、さぞかし綺麗な水草が生い茂った清流なのだろうと期待していたのだったが、実際は工場裏手の殺風景な排水路だったので初めて現場を訪れた時に、かなりがっかりしたのを覚えている。その当時、明治製菓からは温排水が排水路へと流されていたので、熱帯魚のグッピーがこの排水路で野生化して繁殖。工場敷地内ではうなぎやティラピアの養殖も行っていたようで、ティラピアもたまに捕らえることが出来た。現在の排水路は水深10cmほどだが、グッピーが生息していた頃はもっと水量が多かったように記憶している。以前は、薬品の匂いのする生温かく茶色っぽい排水が流れていたが、今は無臭で透明な排水が流れている。試しに排水路に手を入れてみたが冷たかった。これではグッピーは生息出来ない環境だ。このグッピーが生息していた排水路をグッピー川と呼んでいた。小学生の頃は何度も訪れ、最後に魚獲りに訪れたのは高校1年の時。その時、このグッピー川で一緒にティラピアを釣った同級生は若くして亡くなり、グッピー川の思い出話も出来なくなってしまった。今でも酒匂川サイクリングコースの明治製菓近くを通ると、ふとグッピーを獲った昔のことを思い出す。生温かな排水の感触。茶色の水の中に棲むグッピー。なんとも不思議な場所だった。

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