tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

非正規労働者問題、雇用・生産性の視点から

2024年05月20日 15時50分58秒 | 労働問題

非正規労働者の問題は、格差が少ないといわれた日本の格差社会化の大きな要因として、所得の低さを中心に、無技能で雇用の不安定、更にはいわゆる80/50問題といった社会的な側面で論じられることが多いようです。

しかしこの問題は視点変えれば、日本経済、日本の産業の低生産性問題としての面でも影響は大きいはずです。

端的に言って、雇用者の4割近くが無技能あるいは低度の技能しか持っていないという雇用構造の産業社会が、高水準の生産性を上げる社会ではあり得ないという問題です。

こうした研究がないかとネットで探してみたのですが、見つかりません。

非正規の問題を社会問題として捉えれば、その対策は政府の仕事という事になるでしょう。しかし、生産性の問題として捉えれば、それは企業の問題にもなって来るのです。

勿論政府も、雇用保険2事業の中の能力開発事業など色々なことをやっています。これは結構なことですが、日本の場合伝統的に、従業員の能力開発は企業の仕事で、政府の仕事はせいぜいその補完程度なのです。

ですから、長期不況で、企業が非正規を増やし教育訓練の手を抜くと、現状の無技能、低技能の非正規問題が起きてしまうのです。

つまり、日本の産業社会では教育訓練の仕事は殆どが企業の手でやられていたのですから、それが30年不況で手抜きされた結果は、結局は企業の新たな努力で取り返さなければならないという事になるのでしょう。

企業レベルで考えてみれば解りやすいですが、100人の従業員がいて、業績悪化のためにその4割を非正規に置き換え、きちんと教育訓練をせずに何とか繰り回してきた企業と、頑張って教育訓練を続け全従業員を1人前に育ててきた企業とでは、企業としての生産性の格差は歴然でしょう。

有資格者が不足で無資格者がハンコを借りていてそれが発覚したり、ケアレスミスで事故が発生し一時休業といったことが起きれば生産性は更に大きく落ち込みます。

今の日本経済は客観的に見ればこうした状態にあるのではないでしょうか。加えて、優秀な人材が海外に脱出して競争相手国の技術水準を高めるようなことも起きたりします。

人を育てるのにはそれなりの時間がかかります。挽回には「時間とカネと努力」が必要です。しかし日本の復活のためには、まさに今から、それが必須なのです。

10年前、黒田日銀の政策で、1ドルが80円から120円になり、「円高不況」は無くなりました、このブログでは、日本企業、日本の経営者は、この機を生かして非正規従業員を正規化し、教育訓練の再開に踏み切ると予想していました。

しかし、それから今日まで、非正規比率が大きく減ったというニュースは聞かれません。長期不況に苦しんだ日本企業の多くは、当面の利益確保という短期視点の経営に走ったまま今日まで来てしまったようです。

4割近い非正規従業員が、それぞれの職場でベテラン社員になった時、日本産業の生産性は大幅に上がるでしょう。

これからの日本、人手不足を嘆く前に、やるべきことはいろいろあるようです。

頑張れ日本!


庭に雀を呼ぶ秘訣

2024年05月18日 14時38分37秒 | 環境

もう何年も、雀が少なくなったとか、庭に雀が来ないといった話を聞きます。雀だけではないようで、渡り鳥のツバメも含めこの辺りでは鳥たちの姿が減ったとも言われます。

 

カラスだけは結構この辺りにもいるようで、朝、ゴミを出しに行くと電線に止まってうるさく鳴いています。どいうやら生ごみを狙っているようです。これは要注意です。

やっぱり鳥たちにとっても一番大事なのは餌でしょう。「カラスはぁ外、スズメはぁ内」と差別するのは人間の都合で、カラスが悪いわけではありませんが、やっぱりカラスは苦手です。

雀が減ったのは瓦屋根が減って巣作りの場所減ったからといわれますが、鳥たちはそれぞれに営巣の場所を広げ頑張っているようです。我家の狭い庭でも玄関わきの花つきの悪いハナミズキが葉を茂らせた時には毎年メジロが巣を作ったことはこのブログでも紹介しました。

梅の木に巣箱を架けた時は、雀とシジュウカラが巣箱争いをしていました。梅の木や山茶花の木が、フェンス越しに隣家に伸びるので丈を低くした結果、シジュウカラの巣箱も撤去、今年は山茶花の花も少なくて、ヒヨドリもあまり来ませんでした。そんなことでもう少し雀が来るといいなと家内と話しました。

「去年バケツ田圃で稲を育てた時は秋には随分雀が来たね」と私、「餌があれば来るでしょう」と家内が云います。という事で毎日餌を撒く事にしました。

以下、私の発明です。朝晩はご飯を食べます(昼はパン)。私が後片つけをします。ご飯を「チン」した容器や食器を洗うと、洗い桶の底に2-30粒のご飯粒がお菜の切れ端などと一緒に残ります。それをネットのゴミ入れに捨てます。その際、ご飯粒や穀物類は重いので、上手く流すと洗い桶の底に飯粒が残ります。これを残った水と一緒に庭に撒くのです。

この家の庭にはいつも餌があると解れば雀は必ず来ます。雀だけではありません。ムクドリ、山鳩も来ます。

写真を撮ろうと家の中で立ち上がりますと、パッと逃げますので、立ち上がらず、スマホを持ってガラス戸越しに何日もシャッターを切り、やっと撮れた「鳩とスズメのすれ違い」をトリミングし、伸ばしたのが上の写真です。

山鳩はゆっくりですが、雀は素早くて苦労しましたので、こんな写真でも本人は満足です。


高度産業技術の細分化と総合化、そして人材育成

2024年05月17日 20時08分14秒 | 労働問題

九州工業大学飯塚キャンパスというのはユニークな教育環境を持っているようです。

今朝の朝日新聞にも紹介されていました。今後の産業発展の心臓部のように言われ、世界が高性能化の開発競争をしている半導体についてですが、その半導体の製造装置の全工程を、クリーンルームに入ることから始めて、実際の機械を見て、触って学べるという事で大人気とのことです。

今や半導体製造は、設計から最後の検査まで多くの工程に細分化され、それぞれの工程が超高度な技術によって支えられているとうのが実体でしょう。

飯塚キャンパスにいけば、その細分化された全工程を一貫して現物を見、手で触って研修を受けられる施設が用意されているというのです。

この部門は「マイクロ化総合技術センター」というのだそうで、センター長の中村和之氏が自らの経験から、技術が高度化し細分化されればされるほど、全体の見る目が大事になるという考え方に立つ施設だそうで、日本有数の半導体企業の新入社員研修から学び直しの場としての研修まで、参加者が増え続けているとのことです。

アダム・スミスが「国富論」で分業による生産性の向上を書いていますが、産業技術の発展は分業と総合の合理的で緻密な連携を必要としているようです。

部品の規格を統一化した製品を作り、部品を取り換えるだけで製品は新品同様に機能するという方式を最初に取り入れたのは「ウインチェスター銃」だという話を聞いて感心したことがありましたが、そこには製品と部品、つまり部分と全体の関係をしっかりと把握している人が居るのだろう、その人がウィンチェスターという人なのだろうと思いました。

今は自動車でも、コンピュータでも、飛行機でも精密な部品の集合体です。そして部品すべてが完成品の性能に最適な機能を果たすように設計され製造され、そして利用されています。

その上に、最終製品の性能は常に高度化し、部品はそれを支える最適なより高度な機能を持たなければなりません。この製造プロセスの細分化と完成品の総合能力の向上を実現するために必要なのが、部品の製造過程の中にも最終製品の姿(性能)がイメージされている事が大事だという見方があります。

生産工程が細分化されればされるほど、部品と完成品の関係、部分と総合のあるべき関係を、それぞれの部分の担当者が正確にイメージできるかどうかが大きく関わってくるのではないでしょうか。

分業は作業を単純にします。それが効率化、生産性の向上を可能にすると考えたのは産業化の初期の姿でしょう。しかし作業の単純化は同時に作業の非人間化にもつながります。人間関係論はそこから生まれました

実はこの辺りが、日本的経営の出番だったようで、QCという統計作業を「QCグループ活動」に発展させた日本人の知恵がかつて一世を風靡しました。

この日本人の考え方の特性は、今も生きていて、部分に携わるものも全体を理解し、全体に繋がろうという活動の重視になっているようです。出発点は部分でも、それは常に全体の理解の中での部分、といった意識や活動が注目されるのではないかと感じるところです。

冒頭の「マイクロ化総合技術センター」の発展を期待します。


2024年1‐3月期のGDP速報を見る

2024年05月16日 15時37分49秒 | 経済

今日、内閣府から標記1-3月期のGDP速報が発表になりました。

残念ながら1-3月の実質成長率はマイナス0.2%とマイナスに落ち込み、同時に発表された2023年度のGDPは、年初に発表された閣議決定の政府経済見通し実績見込みの1.6%から1.2%に下がってしまう事になりました。

その結果、コロナ禍以と降の日本経済の実質成長率の推移は2020年度のコロナ禍によるマイナス3.9%から2021年度以降プラスに転じましたが、21年度2.8%、22年度1.6%、23年度1.2%一貫して低下傾向になってしまいました。

企業業績の回復、インバウンドの盛況、株価の上昇、昨年度の春闘賃上げは3%を超えて日本経済にも不況脱出の気配が出てきたのではないかといった感じも出て来ているのですが、現実の数字は予想外に厳しいようです。

発表になった1-3月のGDP速報を見ますと、この不調の原因、問題点が見えてくるように思われます。

    実質GDPと主要指標の推移(実質値、%)           資料:内閣府「四半期別GDP速報」                    

先ず、実質GDPですが22年度は消費が好調な年度でしたが、23年度に入って急激に落ち込んでいます。原因はその下の実質家計最終消費支出の落ち込みです。

それでは、実質家計最終消費支出の落ち込みの原因はと言いますと、その下の斜体になっているデフレーターの上昇です。(ここでのデフレーターは消費者物価ではなく国内家計最終消費支出デフレーターです)

表にはありませんが、名目家計最終消費支出は23年度の4-6月には対前年同期比3%台の増加でしたが、期ごとに減って1-3月には0.6増に減っていまい、名目値の伸びうも減少ですから家計は物価の上昇に負けて緊縮型になった様子が明らかです。

これは皆さんが実感されたように、食料品、飲料、調味料、日用品などの価格が波状の一斉値上げなどで異常と言えるほど上がったことによります。

こうした生活必需品の値上げは昨年秋で一段落かと思われましたが、その後も円安による輸入品の値上がりや原材料人件費の価格転嫁の容認政策で、高止まりの恐れがあるとも言われ、今後も予断を許さないところです。

企業設備は揺れはありますが、企業の設備投資意欲は堅調で、この速報も法人企業統計季報が出れば設備投資のところで上方修正の可能性もあると思っていますが、矢張り問題は民間消費、基本的は家計消費の動向で、これは消費支出と物価の相互作用で決まってくるところですから、当面、4-6月、そして、それ以降の家計消費の伸びが物価上昇を上回るかどうかが大きなカギでしょう。

という事は、2024年度の日本経済を成長路線に載せるためには4つの条件が必要という事になります。

1つは、賃金水準を、企業が可能な範囲で出来るだけ高める努力をすること。

2つは、価格の設定は厳密にコスト上昇にとどめ、便乗値上げをしない事。

3つは、生産性向上努力を最大限加速する事。

4つは、家計は、貯蓄指向から消費指向に少し気分を変えてみる事。         ◇

どうでしょう。どれもみんなやろうと思えば、出来る事のような気がしますが。


心配なアメリカ経済の今後と日本

2024年05月15日 16時27分26秒 | 国際関係

アメリカ経済はサービス部門の活況で、雇用も堅調、賃金も上昇で、その結果が消費者物価の上昇率が3%を切らず、この所は前月比も上昇という事のようです。

経済が元気という事は結構なことですが、生産性の上がりにくいサービス部門が好調というのは何か心配でもあります。生産性が上がらないと人手不足、求人増につながり、雇用増が経済の活発化、好況の先行指標と考えるアメリカの見方ではいいかもしれませんが、そのせいで賃金が上がり、消費者物価が下がらないという事になりますと問題が出て来ます。

というのは、FRBはインフレ目標2%を掲げ、それが達成されれば金利を引き下げ景気抑制策を止めると言っているのですが、この所消費者物価が3%がらみでそれ以上低くならないといった様子だからです。

FRBのパウエルさんは、この分では金利引き下げは当面視野に入らないといった発言をしています。アメリカの経済成長率の予想は、今年は2.6%(実質)で良いのですが金利が下がらないと住宅建設や製造業の景気は良くならないので、来年は1.8%の成長に減速の予想だそうです。

これはアメリカにとっても良くないのですが、アメリカの金利が下がらないと、日本との金利格差が開いたままになる可能性が大きく、日本は円安が更に進むとか、アジア諸国なども通貨安になってインフレ進行、経済不安などが言われ始めています。

アメリカは、今、国際情勢の不安定で、ウクライナ支援をはじめ出費が多ですから、ドル高の方が良い面もあるかもしれませんが、国際競争力という面では当然問題が出るでしょう。

その具体的現われかどうかは解りませんが、バイデン大統領が、中国製電気自動車(EV)の関税を25%から100%に引き上げるというショッキングな発言をし、更に中国対象に電池やソーラーパネル、加えてアルミや鉄鋼といった工業原材料の関税引き上げにも言及しています。

中国は当然これに反発して、何かトランプさん時代の関税引き上げ競争のような雰囲気になってきそうな気配です。

覇権国、基軸通貨国のアメリカが果たさなければならない役割は大変かと思いますが、残念ながら、アメリカの経済力はそれについてけないのが現状でしょう。

日本も、アメリカら防衛装備品など、色々な物を買わなければならないようですが、円安もあり大変な値上がりのようです。

今の対米関係では、NY市場と東京市場の関係のように、アメリカに依存して動くものがたくさんありますから、アメリカの経済情勢には最大限の注意を払わなければなりませんし、同時に、日本経済自体も、もっと確り力をつけなければならないのでしょう。

それにしては、日本の政権の現状は、一体何を考え、何をやっているのかコップの中の泥仕合という情けなさです。これではダメだと思っている人は大勢いるのでしょうが、それでは何をすべきかをきちんと考える人が出てこないというのが今の日本の一番の悲劇のような気がします。