あんたはすごい! 水本爽涼
第百六十ニ回
そういう時にかぎって事が運ばないのが世の常である。その日はベッドへ入ってもお告げは二度となく、私は待ちくたびれながら深い眠りへと引き込まれていった。
次の日、大異変の第二弾に私は襲われた。襲われたというのは、鳥殻(とりがら)部長死去による部長就任という第一弾の大異変から、まだそう長く経っていなかったからで、ようやく落ちつけそうだったのだ。落ちつけそうで落ちつけないのだから、これはもう、襲われたと云う他はないだろう。この第二弾というのは、煮付魚也(につけうおや)代議士からの電話であった。煮付先輩とは学生時代から先輩後輩の間柄で、何かと昵懇(じっこん)にして戴いていたのだが、今や先輩は国会議員の急先鋒として飛ぶ鳥を落とす勢いで、政府の要職について活躍していた。
「久しいな、塩山。私だよ、分かるか? …そう云っても分からんだろうが…」
「? …先輩? 煮付先輩ですか! ワア~、お久しぶりです。ご無沙汰しております…。お元気そうで、なによりです!」
「君も元気そうじゃないか。…そういや随分、会ってないよなあ~」
「ええ…、そうですね、そうなります。いやあ、その節(せつ)は…どの節だったか? いや、とにかく、お世話になりましたあ~!」
「そんなことはいいんだよ、塩山」

第百六十ニ回
そういう時にかぎって事が運ばないのが世の常である。その日はベッドへ入ってもお告げは二度となく、私は待ちくたびれながら深い眠りへと引き込まれていった。
次の日、大異変の第二弾に私は襲われた。襲われたというのは、鳥殻(とりがら)部長死去による部長就任という第一弾の大異変から、まだそう長く経っていなかったからで、ようやく落ちつけそうだったのだ。落ちつけそうで落ちつけないのだから、これはもう、襲われたと云う他はないだろう。この第二弾というのは、煮付魚也(につけうおや)代議士からの電話であった。煮付先輩とは学生時代から先輩後輩の間柄で、何かと昵懇(じっこん)にして戴いていたのだが、今や先輩は国会議員の急先鋒として飛ぶ鳥を落とす勢いで、政府の要職について活躍していた。
「久しいな、塩山。私だよ、分かるか? …そう云っても分からんだろうが…」
「? …先輩? 煮付先輩ですか! ワア~、お久しぶりです。ご無沙汰しております…。お元気そうで、なによりです!」
「君も元気そうじゃないか。…そういや随分、会ってないよなあ~」
「ええ…、そうですね、そうなります。いやあ、その節(せつ)は…どの節だったか? いや、とにかく、お世話になりましたあ~!」
「そんなことはいいんだよ、塩山」