水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第百八十六回)

2010年12月29日 00時00分02秒 | #小説
  あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百八十六
 寝耳に水の話で、私はしばらく茫然(ぼうぜん)として言葉を失った。冷静になろうとするが、すぐ心が乱された。恐らくは、みかんの玉が霊力を発して先輩をその気にさせた…と考えられた。でなければ、あまりに突飛でありえない話だったからだ。
「…なぜ、私なんです!?」
 一瞬の途切れた会話が復活した次の瞬間、私は思わずそう訊(たず)ねていた。
「理由は、ただひとつ。そう思ったからだ」
 この言葉で、みかんの玉が放った霊力による、ということが、ほぼ確定した。
「だが、それだけじゃないぞ。お前の有能さは学生時代から見てきた俺が一番よく知ってる」
「いやあー、嬉しいんですが弱りました。今はとても心の準備ができません。お引き受けしていいものかどうか…」
「そら、そうだろう。以前のように十日ばかり待とう。改造は、まだ当分先のようだからな」
「その改造内閣は、いつ頃?」
「総理の腹づもりひとつだが、この前のお話では、半年ほど先をお考えのようだ…」
「半年ほど先ですか…」
「ああ…。飽くまでも目安だ。予算審議や重要法案の成立いかんでは延びるかも知れん」
「何もなければ半年後、ということですね?」
「まあ、そうなるかな…」
 ふたたび、二人の会話は途切れた。

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