あんたはすごい! 水本爽涼
第百八十回
「正直云って、少し怖いです…」
私は気持ちのまま、そう云った。
『心配されずとも、こうした映像の頃の塩山さんは、気持の上でも超人になられていることでしょう。ですから、ご安心を…』
「私は別に今のままでもいいんです。部長になれたことだけで充分なんですから…」
「いや、あなたには生まれ持っての霊に対する感応力がお有りなのです。それは取りも直さず、あなたが世界、いいえ、この地球の指導者として様々な分野で崇(あが)められる存在になられる証拠なのです」
「はあ…」
私は玉のお告げに、いつの間にか説得され、その気になっていった。
『長く話してしまいました。では…』
「あのう…、今度はいつ?」
『それは決まりで云えないのです』
「決まり、とは?」
『決まりです。霊界の決まりごとです』
「霊界? そのようなところがあるんですか?」
『そのことも決まりで、今は云えません。云えるのは、一年以内にお亡くなりになられる方だけなのですよ。悪(あ)しからず…』
「そうなんですか…
でも、霊界があると分かっただけでも随分、お力を頂戴いたしました」
『そうですか、それはよかった』
そこでお告げはピタッと途切れた。
残月剣 -秘抄- 水本爽涼
《惜別》第二十五回
それに、代官の次男坊が、まさかそこまで金銭に困っているとも思えなかった。
蓑屋の主(あるじ)、与五郎は気立てのいい男と見え、左馬介が訪うと、快く奥へと通し、茶と菓子をふるまってくれた。それに、左馬介が訊ねることにも気持よく答えた。
「いやあ、そこ迄は流石に分からないんでございますけれども…。恐らく、何かお考えあってのことでございましょう。何かを、この辺りで、お探しの故か、或いは訪ね人をお待ちになられているのか…、そこら辺りのところは、ちと量りかねますが…」
回り諄く云う与五郎なのだが、要は分からんのだ…と、左馬介は察した。
「一時(いっとき)、如何ほどお支払いなのですか?」
「一度(ひとたび)、七、八十文でお願いを致しております…」
「その時々で違う、ということですか?」
「いいええ、樋口様の御都合で、お越しが遅れます日と、上手い具合に丸一時、お越し願える日との違いで…」
ああ、そういうことか…と、左馬介は得心した。
「それで、今日も酉の刻にはお見えになるでしょうか? なにぶん、
こちらからは連絡出来ず、漸く権十さんから得た話でして…」