あんたはすごい! 水本爽涼
第百六十四回
「まあ、それが主因だ。だから米粉の代用として需要を喚起(かんき)しようというんだよ」
「代用は可能なんですか?」
「食感を近くまで変える繋(つな)ぎ粉を混ぜればOKだ。この返事、すぐにとは云わんし無理だろう。一週間後に、また電話するから、いい返事を期待しているぞ。…そうだな、一週間後の、この時間帯でどうだ?」
「はあ…。そりゃ、こんな話は私の一存ではどうにもなりませんし、取締役会の承認もいる内容ですから…。会議に諮(はか)り、十日も戴ければ…」
「よし! じゃあ、十日後のこの時間帯に電話することにしよう。なにぶん、よろしく頼むぞ」
「はあ、こちらこそ…」
一方的に寄り切られた形で、電話はプツリと切れた。なんだか物の怪(け)に、つままれたような気分が私はした。だが、電話があったことは事実だったし、煮付(につけ)先輩も実在の人物だから、強(あなが)ち、つままれた訳でもないか…と、あとになって思えてきた。
次の日の朝、私は秘書の淹(い)れてくれたお茶もそこそこに、専務室へと駆け込んでいた。専務室には柔和な笑みを湛(たた)えて座る鍋下(なべした)専務の姿があった。

第百六十四回
「まあ、それが主因だ。だから米粉の代用として需要を喚起(かんき)しようというんだよ」
「代用は可能なんですか?」
「食感を近くまで変える繋(つな)ぎ粉を混ぜればOKだ。この返事、すぐにとは云わんし無理だろう。一週間後に、また電話するから、いい返事を期待しているぞ。…そうだな、一週間後の、この時間帯でどうだ?」
「はあ…。そりゃ、こんな話は私の一存ではどうにもなりませんし、取締役会の承認もいる内容ですから…。会議に諮(はか)り、十日も戴ければ…」
「よし! じゃあ、十日後のこの時間帯に電話することにしよう。なにぶん、よろしく頼むぞ」
「はあ、こちらこそ…」
一方的に寄り切られた形で、電話はプツリと切れた。なんだか物の怪(け)に、つままれたような気分が私はした。だが、電話があったことは事実だったし、煮付(につけ)先輩も実在の人物だから、強(あなが)ち、つままれた訳でもないか…と、あとになって思えてきた。
次の日の朝、私は秘書の淹(い)れてくれたお茶もそこそこに、専務室へと駆け込んでいた。専務室には柔和な笑みを湛(たた)えて座る鍋下(なべした)専務の姿があった。