あんたはすごい! 水本爽涼
第百八十四回
「それよりお前、今度はいつ東京へ来れる?」
「えっ? 今のところ予定はないんですが…。何かあるんですか?」
「いや、今は長電話になりそうだからい…。詳しいことは、そっちへ行って炊口(たきぐち)さんにお会いしてから話すよ。まあ、悪い話じゃないから、楽しみにしてろ」
「はい、分かりました…」
電話はそれで切れた。煮付(につけ)先輩が私に何を云いたかったのかが少し気にはなったが、悪い話じゃないということなので自然と意識から遠退(とおの)いた。その先輩が我が社へ車で乗りつけたのは昼の三時頃だった。政府高官が来社するというので社内は騒然としていた。この日ばかりは炊口社長自らが陣頭指揮に立ち、接遇に手抜かりがないか、細かく事前チェックした。そして、先輩が車から降り立つと、社をあげてのお出迎えである。管理職以下、まるで賓客(ひんきゃく)を出迎えるかのように正面エントランスに整列し、先輩と数人のお付きの人達を迎えた。もちろん整列した中に私がいたことは云うまでもない。煮付先輩は炊口社長と笑顔で堅(かた)い握手を交わし、社長室へと消えた。二人が何を語らったのか、私にはまったく分からなかったが、恐らくは米粉プロジェクトの今後についての意見交換かと思われた。
第百八十四回
「それよりお前、今度はいつ東京へ来れる?」
「えっ? 今のところ予定はないんですが…。何かあるんですか?」
「いや、今は長電話になりそうだからい…。詳しいことは、そっちへ行って炊口(たきぐち)さんにお会いしてから話すよ。まあ、悪い話じゃないから、楽しみにしてろ」
「はい、分かりました…」
電話はそれで切れた。煮付(につけ)先輩が私に何を云いたかったのかが少し気にはなったが、悪い話じゃないということなので自然と意識から遠退(とおの)いた。その先輩が我が社へ車で乗りつけたのは昼の三時頃だった。政府高官が来社するというので社内は騒然としていた。この日ばかりは炊口社長自らが陣頭指揮に立ち、接遇に手抜かりがないか、細かく事前チェックした。そして、先輩が車から降り立つと、社をあげてのお出迎えである。管理職以下、まるで賓客(ひんきゃく)を出迎えるかのように正面エントランスに整列し、先輩と数人のお付きの人達を迎えた。もちろん整列した中に私がいたことは云うまでもない。煮付先輩は炊口社長と笑顔で堅(かた)い握手を交わし、社長室へと消えた。二人が何を語らったのか、私にはまったく分からなかったが、恐らくは米粉プロジェクトの今後についての意見交換かと思われた。