水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第百七十九回)

2010年12月22日 00時00分02秒 | #小説
  あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百七十九回
『ははは…。まあ、そう云わず頑張ってください。そのうち、大きな幸運があなたに訪れるはずですから…』
 前にも云ったと思うが、お告げは私だけに聞こえているのだ。その声は想念としてやや低く響く私の声である。玉から発せられた霊力が私の身を借りて私自身へ問いかけるのだった。
「これから私は、どうなっていくんでしょうか? この前はお答えを戴けませんでしたが…」
『お知りになりたいですか?』
「ええ、是非(ぜひ)…」
『それじゃ、ほんの少しだけですが、フラッシュでその映像をお見せしましょう。ただし、画像は動画ではありませんよ』
「はい、お願いします…」
 それから数秒後、私の脳裡に今まで経験したこともないような場面が断片的に浮かんだ。そのフラッシュ映像はカラーで、当然、その中には私が映っていた。余りのシュールさに、私は有り得ない…と思えていた。
『どうです? お信じになられたでしょうか?』
「…い、いえ! 有り得ないことばかりですから、とても信じられません」
『そうでしょうとも…。しかし、これらのことは今後、あなたの身に確実に起こることなのですよ』
 お告げは荘厳さを帯びて響いた。

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残月剣 -秘抄- 《惜別》第二十四回

2010年12月22日 00時00分00秒 | #小説

        残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《惜別》第二十四

 二人の玄関での遣り取りを遠目に窺っていた長谷川と鴨下は、首尾よくいったようだな…と、左馬介が銭を渡したのを見届け、互いに囁き合った。
 権十が帰っていった後、長谷川と鴨下は、左馬介へ躙(にじ)り寄った。
「上手く、いったようだな、左馬介」
「お蔭様で…。これで樋口さんとは、こちらからも連絡をつけられそうですね」
「そいつは、よかったですね」
長谷川に鴨下も続いた。こうして、幻妙斎の真新しい現況を唯一、知る樋口との出会いが可能となり、左馬介は、ひとまず、ほっとした。
 次の日の昼過ぎ、左馬介は道場を出て、葛西宿へと向かった。権十の話からすれば酉の刻限には随分と余裕がある。そんな早く出る必要はなかったのだが、左馬介には少し、存念があった。いうのは、骨董の蓑屋の主(あるじ)に、樋口が小銭を稼ぐ目的を訊きたかったのだ。恐らく、主も詳細は知らないであろう。だが、どういった訳があるのか…という究極のところを知りたいと思ったのだ。僅かに一時(いっとき)ほどのこととはいえ、影番を務める多忙な樋口に、とても余裕の時などなかろうに…と、左馬介には思えたのである。


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