水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第三十三回)

2012年02月11日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第三章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
    
第三十三回
「出来るだろうかね?」
『如意の筆の霊験なら、何の問題もないとは思うんですが…』
「ですが…とは?」
『ええ、念じ方が問題になると思うんですよ。詰めないと…』
「ああ、そりゃそうだな。少し考えようや」
 そういうと、腹が空いたのか、上山は立って厨房の方へ移動した。当然、幽霊平林も、あとを追う。
『地球語とかは、どうなんでしょう。世界が一つに結ばれますよ』
 幽霊平林が思いついたように唐突に云った。
「あっ! 地球語か…。いつやら、私の後輩の塩山も、そんなこと云ってたなあ」
『例のノーベル賞の?』
「ああ、元大臣で社長の後輩だ」
『課長は、それほどでも…なんですがねえ?』
「ははは…、やかましい! 大きなお世話だ」
 上山は大笑いしたが、すぐ、「しかしそれも、内容としては、いいかも知れんぞ…」と、加えた。
『じゃあ、地球語に的(まと)を絞りましょうか?』
「…、でもなあ。奴の真似っていうのも、どうかと思えるしなあ。奴に迷惑はかからんが、やめよう。私達はオリジナルを考えようや、オリジナルを!」
『はい…。僕は、それでいいんですけどね。コレッ! てのは、ありますかね?』
「世界の人々の発想を機械から自然へ戻す…ってのは、どうだろう?」
『産業構造を、ですか? 多次から一次産業に回帰すると?』
「ああ…。田丸工業は、さっぱりになるがな、ははは…。簡単に云やあ、文明からの脱却だわな」
『それだと、食糧増産とか地球環境回復にも繋(つな)がりますしねえ…。そりゃ、いい!』
「人類は文明進歩を一端、止めて、真摯(しんし)に地球と向き合う必要があると思う。これだけ文明が進歩すりゃ、そういう時代って、あっていいんじゃないか?」
『ええ…』


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