水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第二十三回)

2012年02月01日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第三章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
    
第二十三回
『んっ? …まあ、あるといやあ、あるんですが…』
「どんなこと?」
『ですから、僕と課長の思いどおりになるんですから、誤ったことは念じられないってことです。いつかも、そのことは話題になったと思うんですが…』
「ああ…。そりゃ慎重に考えにゃならんわな」
『でしょ?』
「ああ…」
 二人(一人と一霊)は、またおし黙った。その後、しばらくは沈黙が続いたが、上山は突然、ノートを開いた。
「幾つか書いていこうか、とにかくな。で、書いたあと、考えようや」
『はい…』
「じゃあ、云ってみてくれるか」
『えっ? そんな他人任せな…』
「いや、すまん。しかし、君は他人じゃないからな。というより、正確にはもう幽霊だからな」
『はあ。それはまあ、そうですが…』
「何でもいいから云ってくれ」
「はい! まず独裁者のような個人と温室効果ガスのような物とに分けて念じる内容を考えましょう」
「おお、そうだな…。人と物だな。そうそう…」
 上山はノートに人と物という文字をボールペン書きした。どこか他力本願的な上山だった。
「独裁者は、そこに書いてある人間だろうが、まあ、そこに書いてある人間達を独裁者と決めつけられるかは分からんが…。そうだろ、君?」
『ええ、まあ…。霊界万(よろず)集にも独裁者とは書かれていませんでした。飽くまでも、独裁国家の代表者という呼び方で記(しる)されてました』
「霊界の書物だから、そう穿(うが)った見方はしてないはずだから、正確なんだろうな。彼等は我々、人間界では独裁者と報道されているが、これは考えようによっては、メディアの偏見とも考えられるからな。何が善で何が悪かは、神のみぞ知る、だっ!」


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