幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第三十九回
『それで、どうだったんですか?』
「ああ…、早い話、私と君が目指していたのは、大きな影響を与えることだということさ。大きな影響を与えなければ、霊界からストップもかからないと、こうなる」
「はあ、それはまあ、そうですよね。で?」
「だから、教授が云うには、小さいことから始めれば、問題はないだろう、ということなんだ」
『…、なるほど、そういうことですか』
幽霊平林は、上山に軽く丸め込まれた。
「そうなんだが…。何かコレ! ってのは、ないか?」
「訊(き)くばかりじゃなく、課長も考えて下さいよ」
「ああ…」
一時停車し、二人は癖になった腕組み姿勢で考え始めた。
『宇宙方面で何か、いいのありませんか?』
「宇宙と幽霊じゃ、コントラストが、きつ過ぎるんじゃないか?」
上山は笑いながら云った。
『ああ…! 課長は、いつも茶化すんだから…』
幽霊平林は膨れて不平を吐いた。
「すまんすまん…。宇宙か…。そういや、SF映画じゃ宇宙船の中でプカリプカリ浮かんでないよなあ」
上山は幽霊平林を、じっと見つめた。
『…僕を見て云わないで下さいよ。僕は幽霊なんですから、浮かんでいて当然なんです』
「いや、いやいやいや、そういう意味で君を見た訳じゃないんだ。マジで、そう思えたからさ」
『…そういや、そうですね。SF映画じゃ、無重力って設定されてません』