水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 「見つめていたい」より <推敲版>

2013年04月08日 00時00分01秒 | #小説

≪創作シナリオ≫

    「見つめていたい」より   <推敲版>        


○ 車の中(運転席)・夕方[現在]
 車を走らせる男。
男M「知り合いの結婚式に出席した妻を迎えに、近くの駅まで車を走らせた」
 前方に駅のロータリー。改札口が視界に入る。車を停車させる男。降り出した雨。ワイパーを始動し、ぼんやり改札口を見つめる男。
 窓ガラスから見た駅の風景。
 O.L

○    同      夕方[11年前]・回想
 O.L
 窓ガラスから見た駅の風景。T 「11年前」
 降る雨。空虚に動くワイパ-。ぼんやり改札口を見つめる男。
男M「そういえばボクが二十二歳のときだ。今日と同じように、ひとりの女性を待ちわびた時間がある。あの日も雨で、こうして車の中から改
   札口を眺めていた(※へ続けて読む)」
 列車が駅に入る。ホームに降り立つ乗客。車窓から女を注視して探す男。
男M「(※)あの時は大好きな彼女に、ボクの誕生日を一緒に祝って欲しいと誘ったのだ。彼女は、ちょっと迷った素振りだったが結局OKを
 もらい、その日は朝からウキウキ三昧で、雨も街灯に照らされて銀色に輝いていた」
 改札口から散らばるように降り立つ多くの客。次第に疎らとなる客。
男「……いない…(寂しく)」
 意識を集中させ、女を探す男。


○    同      夕方[11年前]・回想
 車の中で、じっと、改札口を見つめる男。
男M「結局、降り立った乗客の中に、彼女の姿はなかった」

○ 到着する列車、改札口を出る客。到着する列車。改札口を客……
男M「それから十五分おきに列車は到着したが、どの列車からも彼女が降りることはなかった」

○    同      夕方[11年前]・回想
 車のシートを倒し、暗い車中でポカンと口を開けている男。
 空虚なワイパーの音。フロントガラスを濡らす雨。
 O.L

○ 車の中(運転席)・夕方[現在]
 O.L
 空虚なワイパーの音。フロントガラスを濡らす雨。
男M「雨足は強くなり、なんの望みもなく時間が流れた」
     *          *          *          *          *           *          *
 傘をさし、突然、足早やに車へ近づく女(バタバタと)。ドアを開ける11年後の老けた女(妻)。
妻「ゴメン、遅くなっちゃった…(息を切らして)」
男「いいんだ、メグちゃん! 予約したレストランも、まだ間に合うから…(昔に想いを馳せ)」
 唐突に、シートから身を起こす男。
男M「ボクは、弾んだ声で身を起こした」
 助手席を見る男。結婚式の引き出物を持ち、訝しげな表情で助手席に座っている妻。運転する男の顔。
男M『十一年か。フフフ…、メグちゃんも玉手箱、開けたなっ(ハンドルを握りつつ、ニヤッと笑い)』
 小さく咳払いをする妻。カーラジオを入れ、とぼけ顔で車を発進する男。流れる曲 S.E(男にとって懐かしい曲)。音楽を聴きながら運転し、
 過去へ想いを馳せる男。男を横目に見て、訝しげな表情の妻。微笑を浮かべ、家路を急ぐ男。流れる外景。止んだ雨。雲間から車窓に射
 し込む一条のオレンジ光。

○ エンド・ロール
 雨上がりの空。雲間より漏れる一条のオレンジ光。走る車の遠景。
 テーマ音楽
 キャスト、スタッフなど
 
      ※ 坂本博氏 「徒然雑記」内記事より脚色


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連載小説 代役アンドロイド 第164回

2013年04月08日 00時00分00秒 | #小説

    代役アンドロイド  水本爽涼
    (第164
回)
「まあ、お前次第だが…。店の話は聞かなかったことにしよう」
 言い終わると、中林は席を立ち、マンションを退去した。
『また、いらしてね』
 ドアを出る直前、沙耶は感情プログラムの愛想よい猫なで声を出し、中林の顔は思わずグニャリと緩んでいた。さてと…と、保は沙耶の感情システムへの補足プログラムを作り始めた。猛スピードを出す場合には周囲の状況などを考慮した上で・・という抑制プログラムだった。
 次の日、保は研究室で全員の検討会に臨んでいた。完成した自動補足機を、どのようにするかである。このまま、しばらくはマスコミに発表せず、お蔵入りさせて様子を観るのか、あるいは記者会見の通知をマスコミ各社にして、大々的に世間へ発表するのか、はたまたその二つ以外の方法を考えるのか…という検討会である。小一時間続いた検討会は、コレ! という決定論には至らず停滞していた。沈黙して座る四人の場に中林から電話が入ったのである。検討会だから保の携帯は当然、バイブレーション設定にしてあった。激しく震える胸元の携帯を取り出すと、保は保留にした。送信は中林からだった。
「教授、ちょっと、すみません。携帯が…」
 山盛教授は保が手にした携帯を見た。
「ああ、いいよ…」
 保は席を立つと研究室から出て、保留を解除した。


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