代役アンドロイド 水本爽涼
(第180回)
「要は、今日から俺のボディガードを頼むってことだ。警察ならSP!」
保は快活に言った。マスコミなど、沙耶にかかりゃイチコロで、なんの問題もないことは保が一番よく知っていた。なにせ、彼女には言語認識システムがあるのだ。会話する相手の言葉で、相手が何を思っているか、そして、どうしようとしているのかが一目瞭然なのだ。この助っ人を使わぬ手はなかった。
『SP? ああ…アレ? ドラマとか映画の?』
「あんなシリアスで危険じゃないがな、ははは…。マスコミ除けさ。あっ! ちょっと、急がれてますから・・とか先導してくれてさ。沙耶が俺に言ってたやつさ」
『それを私が? …まあ、いいけど。研究室へも行くの?』
「ああ。そうしてもらうと有難い。研究室の連中にも突っ込まれないようガードを頼む。後藤なんか何を言うか分からんからな」
『って、…保以外の人は、すべて対象ってこと?』
「まあ、そうだな…」
保は頷(うなず)きながらミルクを飲み、マーマレードを少し塗ったガーリックトーストを齧(かじ)った。炊事場にいる沙耶は、温めたスープを皿に注いでテーブルに近づくと、置いた。
『私は受け身でいいのね?』
「そうだ。相手が仕掛けてきたとき応じる・ってことで」
『分かった。で、これから? 出るなら着替えなくっちゃ…』
「ははは…、SPなんだから地味にな」
『了解!』
沙耶は身を反転すると、高速の素早い動きで自室へ戻った。