代役アンドロイド 水本爽涼
(第162回)
「それで店長の了解を、か…」
「ああ…お前が身元を保証して引き受けりゃ、親父さん、なんとかOKだろ?」
「まあな…。だが、そんなに上手くいくか?」
「それはお前の腕次第だ…」
中林は腕組みし、畳上の布団で胡坐(あぐら)を掻いて座り込んだ。
「やめとけ! 税金申告とかあるから、必ずバレる。それに、お前も考えたかどうかは知らないが、見つかりゃ警察沙汰だぜ」
「そうか…そうだよな。それに、沙耶がアンドロイドだって分かりゃ、警察は釈放だろうが、一躍、俺は世の人で、ノーベル賞だ。結果、マスコミの目に晒(さら)され、お前と酒も飲めなくなる…」
「まあ、そういうことだ」
そのとき沙耶がコーヒー茶碗をトレーに載せて現れた。そして長机にゆったりと下した。
『どうぞ…』
「あっ! どうも…」
中林は沙耶をマジマジと見ながら言った。どこから見ても人そのものなのだ。出る言葉も人への語り口調になっていた。
「ほんと、マジで人だな…」
「だろ? まあ、完全に成功すれば、介護者や障害者といったいろんな人への代役が務まる」
「お前、それが最終目的か? さすが、目標がでかいなあ!」
中林は壮大な話に感嘆した。そして、コーヒーを啜ると半分方、飲み干した。