水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第162回

2013年04月06日 00時00分00秒 | #小説

    代役アンドロイド  水本爽涼
    (第162
回)
「それで店長の了解を、か…」
「ああ…お前が身元を保証して引き受けりゃ、親父さん、なんとかOKだろ?」
「まあな…。だが、そんなに上手くいくか?」
「それはお前の腕次第だ…」
 中林は腕組みし、畳上の布団で胡坐(あぐら)を掻いて座り込んだ。
「やめとけ! 税金申告とかあるから、必ずバレる。それに、お前も考えたかどうかは知らないが、見つかりゃ警察沙汰だぜ」
「そうか…そうだよな。それに、沙耶がアンドロイドだって分かりゃ、警察は釈放だろうが、一躍、俺は世の人で、ノーベル賞だ。結果、マスコミの目に晒(さら)され、お前と酒も飲めなくなる…」
「まあ、そういうことだ」
 そのとき沙耶がコーヒー茶碗をトレーに載せて現れた。そして長机にゆったりと下した。
『どうぞ…』
「あっ! どうも…」
 中林は沙耶をマジマジと見ながら言った。どこから見ても人そのものなのだ。出る言葉も人への語り口調になっていた。
「ほんと、マジで人だな…」
「だろ? まあ、完全に成功すれば、介護者や障害者といったいろんな人への代役が務まる」
「お前、それが最終目的か? さすが、目標がでかいなあ!」
 中林は壮大な話に感嘆した。そして、コーヒーを啜ると半分方、飲み干した。


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