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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 代役アンドロイド 第165回

2013年04月09日 00時00分00秒 | #小説

    代役アンドロイド  水本爽涼
    (第165
回)
「どうだ、なんでも屋」
「ああ、沙耶には話してないが、俺なりに考えてる」
「そうか…。俺ももう一度、考えたんだが、やはり、なんでも屋が無難だぜ。新聞広告一枚、載せりゃいいんだからな。少し広告代はいるが、お前が考えてる人のためにはなる」
「ああ、じゃあな。今、会議中なんだ」
「そうか、邪魔したな」
 中林が先に切った。保は携帯を胸奥へ入れ、研究室へ戻った。
「待たせました、すみません…」
「もういいの? …それじゃ、続けようか」
 中断されていた無言の検討会が再開された。保がいない間、缶コーヒーを飲んだらしく、それぞれの席にプルトップが開いた缶があった。保の席にも一本、置かれていた。こういう気配りが利(き)くのはアフロ頭の後藤をおいて他にはいなかった。保も飲まないと悪いような気がして、プルトップを引いた。静寂(しじま)に微かな金属音がしたとき、小判鮫の但馬が口を開いた。
「私にお任せ下さい。発表記者会見のすべては、私が責任を持って成功させます」
「学長と教授会の方は研究所責任者の私がなんとかする。恐らく騒然となるだろうが、会見までは秘密厳守をお願いしよう」
 山盛が付け加えるように言った。アフロ頭の後藤も今日は無口だ。保も語らず、缶コーヒーを飲み続けた。
「時期の設定は教授にお任せします」
「但馬君がそういうんなら私が設定するが、それでいいかな、君達」
 教授の視線が助手の保と後藤に向けられた。


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