代役アンドロイド 水本爽涼
(第159回)
朝が昼となり、二時前が来た。今日は随分、一日の巡りが早い…と、保は思えた。その瞬間、中林がマンションのチャイムを押した。
━ ピンポ~~ン ━
保は、中林だ…と思った。奴は単一主義だから一度押せば二度と押さんからな…と閃(ひらめ)いたのだ。
「沙耶、中林だ。お前は、ここにいて構わん」
『別に隠れないわよ。その必要もないし…』
「あっ! そうだったな…」
怪獣長左衛門と手下の里彩を手懐(なず)けた沙耶である。もう人目を憚(はばか)る必要はなかったのだ。というか、働くなら逆に人前での応対に順応させる必要があった。 保が玄関ドアを開けると中林が入ってきた。
「どうかしたか? 冷麦以来だが…」
開口一番、中林はドアを閉じながら言った。
「いや、沙耶のことでな。といっても、出会うのは初めてか」
「ああ、性能を補強するとか前、言ってたよな」
「それはいいんだ。まあ、上がってくれ」
言われるまま、中林は上がった。そのとき、奥のダイニングから沙耶が出てきた。
『いらっしゃい! 私が沙耶です』
「いや…」
中林は人間と見紛(まご)う出来の沙耶に一瞬、面喰(くら)って言葉を失った。