代役アンドロイド 水本爽涼
(第166回)
「はい! それで結構ですが…」
保が先に口を開いた。
「あっ! 僕もそれで結構ですわ」
後藤が保に寄り添う言い方で加わった。
「分かった。では、そういうことで…」
「教授、完成した自動補足機はこのまま研究所に保管しておきますか?」
また、小判鮫のように但馬が教授に吸いついた。
「ああ、それでいいだろう。まだ未発表だから、取られる心配もないだろう」
「はい!」
100%逆らわん人だ・・と、保はある種、恐れ入った。
二日が経った。保がダイニングへ帰宅してダイニングへ入ると、沙耶はいなかった。いつもなら、『お帰りなさい』と、やさしい言葉の一つもかけてくれるのだが…と保が思っていると、玄関ドアが開いて沙耶が飛び込んできた。
「なんだ…出てたのか」
『お帰りなさい。ちょっと、マンション管理人の藤崎さんのとこへ行ってたの』
「藤崎さん? 藤崎さんがどうかしたのか?」
『そうじゃなくって、作った料理が少し多かったからお裾(すそ)分け』
「別に藤崎さんじゃなくったって、いいだろうが…」
普通は嫉妬と男女のドロドロとした関係を疑って怒れるのだろうが、沙耶と保の間では、そういったことはない。保は単に疑問をぶつけたに過ぎなかった。