代役アンドロイド 水本爽涼
(第182回)
『来るべきものが来たようね。まさに、目に見えない敵だわ。ガードしようがない』
保の横に並んだ沙耶が静かに言った。保は、「ああ…」とだけ呟いた。
「おはよう…。んっ!? また連れてきたのか…」
研究室には、いつものように但馬が先に来ていた。
『おはようございます!』「おはようこざいます。いや~そうじゃないんです。マスコミが、うちのマンション前で張ってるもんで…」
「んっ? それで連れてきたの? どういう関係があるんだ?」
「いや、関係はないんですが…カムフラージュですよ、カムフラージュ」
「まあ、どうだっていいがな」
「それより、但馬さんのところも番記者、来ませんでした?」
「ああ、いたいた。振り切って来たさ」
「でしょ!? 連中、なんとかなりませんかねえ」
「私に言われたってな。そのうち飽きて、いなくなるさ、ははは…。人の噂(うわさ)も七十五日って言うじゃないか…」
但馬が上手く言ったとき、藤崎がいつものアフロ頭を揺らせて入ってきた。
「おはようさんです…。大変でしたわ、出るとき。あっ! いつぞやの娘さんや! おたくら、どもなかったですか?!」
『おはようございます』
いつもの関西訛(なま)りで藤崎はロッカーから白衣を出しながら言った。
「今、それを話してたとこだ」
「やっぱり…」
後藤が頷いたあと、山盛教授がドアを開けた。