代役アンドロイド 水本爽涼
(第160回)
「どうだ、驚いたろ」
「ああ、人だよ、人! あっ! 俺、中林と言います。岸田とは大学の同期で…」
『ああ、それはいいんです。あなたのデータは保以上に入ってますから』
沙耶は頭を指さして言った。
「本当は背中のデータ集積回路のチップだけどな。人なら、そうするだろ。そこまで行動パターンは完璧なんだ」
「いや、参ったな! これは、すごい! 人類の偉大な発明だぞ」
中林の足は止っていた。
「いやあ~、そうおだてるな。まあ、ダイニングで話そう」
「ああ…」
保の言葉で我に帰った中林は、ふたたび動いて、ダイニングへ入った。
「で、それだけか? お前が呼び出したんだから何かあるよな」
「ああ、この沙耶のことだ。実は、じいちゃんにはお前の従兄妹って説明してあるんだ。まあ、座れよ。奥がいいか?」
保は一端、テーブル椅子を勧めたが、相手の意思を尊重した。
「畳で胡坐(あぐら)がいいな」
「そうか、じゃあ奥へ…」
「ははは…俺の従兄妹? 困るな、勝手に」
奥の和間へと入りながら、中林は冗談っぽく愚痴った。そして言い終え、また笑った。
「すまん、すまん。すまんついでに、なんだが…」
切り出すタイミングを推し量っていたように、保は相談を始めた。