代役アンドロイド 水本爽涼
(第172回)
「どうって、美味かったよ。ごちそうさん」
『ひと言、そういうの欲しいのよね』
はは~ん、京東大学の女子学生のデータだな・・と保には思えたが、敢(あ)えて沙耶には言わなかった。
「ごめん! 次からな、ははは…」
笑って暈(ぼか)すと、保は新聞を手にして読み始めた。別に読みたかった訳ではない。沙耶には今の俺の気持も感情認識システムで解析されたかも知れん・・という微かな気分が逃避行動として新聞を手にしたのだった。
「どうだ沙耶、収入抜きのボランティアで働いてみるか」
『ボランティア?』
「ああ、ボランティアだ。多業種人材派遣・・早い話、なんでも屋」
『なんでも屋?』
沙耶は言語データ解析をし始めた。
『あっ! そうか…。いろいろ出来るのね。私は出来るものね』
「ああ、沙耶は、ほとんどのことは出来る。ただし、故障の危険性があるから、そう無茶なことは出来んがな」
『それって、フツ~の女の子なら同じでしょ』
「ああ。フツ~は身体を壊すが、沙耶の場合は故障する。その違いだけだ」
沙耶は保の食べ終えた食器を洗い場へ運び、洗い始めた。