代役アンドロイド 水本爽涼
(第178回)
『は~い!』
沙耶がアグレッシブに動いて玄関へ出ていった。ドアスコープの向こうには、いつものボケ~っとした顔で、藤崎が立っていた。
「いや~、この前は、どうも。新聞ば見ましてね。岸田さんは?」
『岸田さんですか? はい、おられますが…。お呼びしましょうか?」
「出来れば…。あいが本当か訊(き)くだけですけん」
『はい。今、呼びます。ちょっと、お待ち下さい』
沙耶は入口から引っ込んだ。
『岸田さん…』
保は、マスコミが騒ぐと、これだもんな…という迷惑顔で玄関へ出た。
「はい、何か?」
「凄いじゃなかですか、岸田さん!」
「いやぁ~、俺はスタッフというだけで、これといって…」
「いやいや、大したもんばい。なにせ、新聞の全国版やけん。そいにテレビも…」
「はあ、有難うございます。申し訳ないんですが、出来れば、騒がないようにお願いしたいんです。いや、迷惑っていうんじゃないんですが、少し疲れ気味でして…」
「ああ・・そいは気がつかんことで済みんやったと。そいじゃ」
藤崎は、たじたじとしてドアを閉ざした。ちょっと言い過ぎたか・・と保は悔やんだ。