代役アンドロイド 水本爽涼
(第158回)
「そうだ…。こんなことを君に言っちゃなんだが、沙耶は、ただの物、なんだよ、世間では。もちろん、俺と中林とは違うがな」
『あっ! それ! 中林さん。どお?』
「馬飼商店の中林か…少し脈はあるが」
中林が店主の馬飼俊一を上手く垂らし込めば、雇ってはもらえそうだった。
『それなら、お願いっ!』
「そうだな…、言ってみるか。沙耶もじいちゃんに訊(き)かれて肩身が狭いからな。だが、勤めたとしてだ。問題は上手くいくか?」
『大丈夫よ、軽い軽い』
「俺は軽くないように思うがな」
『大丈夫! すべてを7、80%に落とすから…』
「そうか?」
俄かに上手くいくとは思えない保だった。それでも、中林には頼んでみよう…と保は携帯を手にした。
「ああ、俺だ。お前、今日はいつ終わる」
「終わるって、今日は家にいる」
「なんだ、休みか…。なら、俺のマンションへ来てくれ。お前が言ってた沙耶にも会えるしな。連れてく手間が省ける」
「ああ…そうだな。昼までは雑用があるから二時頃、行く。それでいいだろ?」
「よし! じゃあ、待ってるぞ」
保はそう言うと、携帯を切った。