代役アンドロイド 水本爽涼
(第168回)
ドアスコープから覗(のぞ)くと、相変わらずボケ~っとした顔で藤崎がドア前に立っていた。
「はい、今開けます」
保はドアを開けた。チェーンは沙耶が戻ったとき話に夢中になり、かかっていなかった。
「いゃ~どうも、こいばお返しに来ました」
藤崎は手に持った食器の小鉢を差し出した。
「えっ? ああ、どうも…」
保は沙耶に聞いていたから、ピン! ときて、受け取った。小鉢を手渡しながら、藤崎は意味深にニタッ! と笑った。
「えーと、確か、お従兄妹(いとこ)さんやったですね?」
「えっ? 私、そう言いました? 実は友人の従兄妹なんですよ」
「そうなんね? まあ私はどうでんよかですがね…。お家賃さえお支払いいただければ…。そいじゃ、よろしゅう言っといて下さい」
藤崎は、いっそう疑わしい目つきでニヤつくと奥をチラリと見て立ち去った。保は、やれやれ…である。その後、沙耶のマイクロチップを交換し、ようやくひと息つくと、小腹が空いていることに気づいた。保は小鉢をキッチンへ置くと沙耶を呼んだ。沙耶はいつの間にか自室へ戻ったようだった。
「おい、沙耶! もう帰られたぞ」
『は~い! すぐ行くわ。いまお化粧中!』
「化粧?!」
保は驚いた。