テレビなどを観ていると、ご出演の俳優さんとかタレントさんがドラマで演じられる姿が目に映(うつ)る。ドラマの中に登場する人物の役(やく)を演じられている訳だ。普通の番組にご出演のときの人となりと、そのドラマの役を演じられているときの人となりのギャップに、その方の演技力を感じるのである。^^ 名優、名タレントほど役になり切られる場合が多いからか、ギャップも当然、大きくなる。これは何も芸能界に限ったことではなく、私達が暮らす人間社会でも同じことが言える。私達は仕事場で、その仕事の役を演じている訳である。天は人の上に人を作らず、人の下にも人を作らず・・と超有名な方が言われたそうだが、現実はシビアで、総理大臣からホームレスまでピンキリだ。^^
とある会社の社屋内である。総務部営業一課の課長補佐代理にこの春から少し昇格した粟口は、馴れない役の所為か、すっかり疲れ果てていた。この日もそうで、出るものは欠伸(あくび)と愚痴ばかりだった。
「あ~~あ! やってられねえやっ!」
そのとき、運悪く、粟口のデスクの後ろを課長補佐の猪田(いのだ)が通りかかった。
「どうしたのっ? やってられないって?」
「あっ! 課長代理! いや、なんでもありませんっ!」
「そおう? じゃあ、頑張りなさいよっ!」
「はいっ!!」
粟口は思わず背筋を伸ばし、声を大きくした。猪田は猪田で、課長補佐になったばかりで馴れない役に手を焼いていた。
「ほんとっ! やってられねぇ~よっ!」
運悪く、その猪田の愚痴をトイレから席へ戻(もど)った課長の芋井(いもい)が聞いていた。
「猪田君、やってられないか…」
「あっ、課長! いえ、そんなことはっ!!」
猪田はすぐに全否定した。すると、芋井は声を小さくして言った。
「ほんと! やってられんよなっ!」
芋井も馴(な)れない役に手古摺(てこず)っていたのである。
ものは思いようで、人は出世しなくてもいいから、自分に合った役の方が暮らしやすいようだ。^^
とある会社の社屋内である。総務部営業一課の課長補佐代理にこの春から少し昇格した粟口は、馴れない役の所為か、すっかり疲れ果てていた。この日もそうで、出るものは欠伸(あくび)と愚痴ばかりだった。
「あ~~あ! やってられねえやっ!」
そのとき、運悪く、粟口のデスクの後ろを課長補佐の猪田(いのだ)が通りかかった。
「どうしたのっ? やってられないって?」
「あっ! 課長代理! いや、なんでもありませんっ!」
「そおう? じゃあ、頑張りなさいよっ!」
「はいっ!!」
粟口は思わず背筋を伸ばし、声を大きくした。猪田は猪田で、課長補佐になったばかりで馴れない役に手を焼いていた。
「ほんとっ! やってられねぇ~よっ!」
運悪く、その猪田の愚痴をトイレから席へ戻(もど)った課長の芋井(いもい)が聞いていた。
「猪田君、やってられないか…」
「あっ、課長! いえ、そんなことはっ!!」
猪田はすぐに全否定した。すると、芋井は声を小さくして言った。
「ほんと! やってられんよなっ!」
芋井も馴(な)れない役に手古摺(てこず)っていたのである。
ものは思いようで、人は出世しなくてもいいから、自分に合った役の方が暮らしやすいようだ。^^
完