水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (84)望(のぞ)み

2021年01月24日 00時00分00秒 | #小説
 まあ、人として生まれた以上、望(のぞ)みを抱(いだ)かない人はいないだろう。もちろん、人によってその望みの大小はあるだろうが…。私なんか、望みを抱いては潰(つい)え、今ではもう、叶(かな)わない望みは抱かないようにしている。^^ ものは思いようで、望みを抱かないと案外、上手(うま)くいくのだから、世間とは不思議な世界だ。むろん、上手くいくとはいえ、最低限の望みらしきものが叶う程度なのだが…。例えるなら、宝くじの数千万円は当たらなかったものの数千円のくじが当たった・・みたいな話だ。^^
 永岡は春の暖かな日差しを浴びながら縁側で日向(ひなた)ぼっこをしていた。今年で齢(よわい)八十八の米寿を迎えた永岡は、残念ながらこの年まで望みを果たせない人生だった。だが、彼は決して落ち込まなかった。というのも、もし望みが叶っていたとして、果たしてこの年まで生き永らえられたか? は、疑問だったからだ。多くの望みは果たせなかったが、結果として、この年まで無茶なトラブルもなく生き永らえられたことは、彼にとって望みが叶う以上に幸せに思えたのである。
「まあ、よし! とするか、ははは…」
 縁側を立つとき、永岡が発したひと言である。
 皆さん、同じ一生、無茶な望みは抱かず、当たり障(さわ)りない人生を幸せに生きましょう!^^

                      

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