水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (75)しない

2021年01月15日 00時00分00秒 | #小説
 (74)するの逆の場合を考えてみたい。相変わらず、アンタは暇(ひま)だなっ! と言われれば、それまでだが、暇なのだから仕方がない。^^
 しないのだから、物事は何も動かない・・と思いきや、動く場合もあるにはある。だから、世の中は奇(き)なるもの・・と言う他はないだろう。^^ ものは思いようで、しなければどうなる? などと考えない方が、案外、物事はスムースに行く場合が多いのは、不思議と言えば不思議である。^^
 とある町の広場に一人のホームレスの男が寝そべっている。ダンボールが一応、彼の住居となっていて、雨に打たれてもいいように、どういう訳か表面には防水の特殊加工が出来ているのだから驚きだ。^^
「まだ、いたのかね?」
 自転車でいつも警邏(けいら)に回っている交番の巡査が、なにもしないで寝そべっている男に声をかけた。
「んっ? …ああ、旦那でしたか」
 顔見知りの巡査に声をかけられ、男は目を開けて答えた。
「なにもしないと、キノコが生えるよっ! ははは…これは冗談だがっ!」
「ははは…生えないでしょ!」
「ああ。まあ、生えはしないがねっ。冗談だよ、冗談!」
「そんなこと言ってると、旦那の方に苔(こけ)が生えますよっ!」
「ははは…生えないだろっ!」
「はい。まあ、生えはしないですが…」
「それじゃ!」
 巡査は軽く敬礼すると、古い自転車をギコギコと漕(こ)いで去った。
 何もしないで居続けても、キノコや苔は生えない。ただ、ものは思いようで、心の中にキノコや苔が生えてよくないみたいだ。人はそういう風に出来ているようである。^^
 
                      

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