水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (83)愚痴(ぐち)

2021年01月23日 00時00分00秒 | #小説
 愚痴(ぐち)をグチグチ言う人は[下手(へた)なダジャレ^^]周(まわ)りの人の気分を損(そこ)ねて嫌われやすい。当の本人はグチグチ言うことで、確かに心の憂(う)さは晴れることだろう。だが、言霊(ことだま)という言葉があるように、口から吐かれた愚痴は、人の心へスゥ~っと忍び込み、気分を害するのである。恰(あたか)も、煙草(たばこ)を吸う人の煙(けむり)が吸わない人の鼻に入り、咽(む)せさせるような感じだ。だから、愚痴る人には近づかない方が賢明・・ということになる。^^ まあ、ものは思いようで、愚痴られても堪(こた)えない人はそのかぎりではないが…。^^
 釜山(かまやま)は文字どおりお釜のような男で、女性のように物腰が柔らかい。話し方も女性そのもので、周りの者からは気持悪く思われている。加えて、さも女性のオバチャン風に愚痴るから、出会った者は、いつしか避けて通るようになっていた。
「あらっ! どうしたのかしらっ? マーケットの格安情報をお伝え出来たんだけど…」
 いつもの時間なら買い物に出る主婦の誰かに遭遇するはずなのに、最近はめっきり出会わなくなっていた。この日は特にそうで、人っ子一人、出会わなかった。
「ったくっ! だから、この団地は評判が悪いのよっ!」
 釜山は誰もいないのに、いつの間にか愚痴っていた。
 少し離れた別の道を買い物で通っている数人の主婦がいる。
「そうそう! 釜山さん! 愚痴らなきゃ、いいお釜さんなのにねぇ~、ほほほ…」
「言えるわっ!」
 数人の主婦は釜山を愚痴りながら小さく笑った。
 勝手な思いようで愚痴れば、必ず愚痴り返されるのである。皆さん、注意しましょう!^^
 
                      

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