水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (71)順序

2021年01月11日 00時00分00秒 | #小説
 物事をしようとする場合、そのしようとするやり方が重要となってくる。どういうことか? といえば、完成するまでの順序である。例えば、Aという作業の初めから、Eという完成までのB、C、Dという過程[プロセス]があったとしよう。ある人はA→B→C→D→Eという順序で完成させるだろう。しかし、違う人は、いや待てよっ! と考え、A→C→D→B→Eの順序の方がいいやっ! と違う順序で完成させる訳である。むろん、A→B→D→C→Eとやる人もあることだろう。どちらにしろ、完成後はEとなって同じだが、作業を進める順序、すなわち、過程[プロセス]が違うと、まあ話はこうなる。
 とある中学校の技術・家庭の授業中である。教師の藤崎は本棚作りをする二人の生徒を前に、ジィ~~っと動きを止め、まるでロダンの[考える人]のようにそのやり方を注視していた。ただ、考えてはいなかった。^^
「おい豚野(とんの)、牛川(うしかわ)のように先に削(けず)った方が、よかないかっ!?」
「いえ、先生。僕は切ってから削ろうと思います」
「…なぜ?」
「なぜもなにも、その方が上手(うま)く出来ると思うからですっ!」
「いゃ~~ぁ、それはどうなんだろう? 先生は牛川のように先に削った方がいいと思うんだがなっ!」
「すみません。僕はその逆で、切ってから削った方がいいと思います」
「そうか…」
 豚野の意志の硬さに、藤崎はそれ以上、言い返せず、好きにすればっ! と思った。
 そして一週間後、作業は終わり、本棚は無事、完成を見た。藤崎は完成した牛川と豚野の本棚を見比べ、漠然(ばくぜん)と思わなくてもいいのに思った。
『どう見ても、同じだっ!』
 ものは思いようで、完成形が同じであれば、やる順序は本人のやりよい順序でよく、どうでもいい訳である。^^

                      

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