水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (64)塩加減

2021年01月04日 00時00分00秒 | #小説
 晩秋から初冬の季節ともなれば、地方では冬の風物詩(ふうぶつし)、お漬物の漬(つ)け込みが始まる。受験生諸君、来春にかけての一夜漬けはやめよう! ^^ 塩加減がダイレクトに効き、漬かりも早いが、食べられてすぐなくなる弱点があるのだ。要は、すぐ忘れ、受験勉強向きではない訳である。暗記ではなく、理解する勉強をしよう!^^
 雑談はさておいて、塩加減で物事は良くも悪くもなる。お医者さんによれば、一日の塩の摂取量は成人で10g少々までらしい。塩分控(えんぶんひか)えめっ! なんて昭和30年代なら全(まった)く遣(つか)われなかった言葉だが、今や、流行(はや)り言葉のように、至極当然に聞くようになった。また、話が逸(そ)れた。^^
 とある地方である。錦戸(にしきど)は朝から大根の漬け込みを始めた。毎年、恒例(こうれい)になっていて、どういう訳か漬けないと冬にならない気分が錦戸の潜在意識の中にあった。レシピをメモった紙は毎年、保存してあり、錦戸はそのメモを見た。
「糠(ぬか)は全重量の10%。で、塩は3~5%だったな…」
 そう呟(つぶや)きながら、錦戸は吊(つ)るしてフニャリと柔らかくなった大根を包丁で切り始めた。葉と根の部分を一刀両断にスッパリ! と斬った訳である。^^ 斬り終わると、秤(はかり)で一本一本、g数を量り、メモをした。それが終わると、携帯の便利ツールで総g数を計算し、×0.1して糠の量を知った。むろん、入れる容器の重さは事前に量り、足して計算していた。その辺りは抜かりがない。^^ 続いて×0.04~0.05して塩の量を知った。ところが、容器に少し塩を入れ過ぎたのである。錦戸はそれに気づかず、漬物容器に漬け込んだ。
「あっ!!」
 気づいたのは、漬け込んだあとである。さて、ど~~したものか? と、錦戸は腕組みをして考え込んだ。
 ものは思いようで、名案が浮かんだのは、それから五分ばかり経過した後(のち)である。
 ひと晩後、錦戸は一端、漬け込んだ大根をバケツへ出し、切った葉を加えてもう一度、漬け直した。糠は半量ほど減らして、である。味のほどはさて、どうなるのか? この段階で、錦戸には分からない。皆さんは、どうお考えだろう?^^
 塩加減を効かし過ぎた場合、対応する思いようの一例である。^^

                      

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