水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (92)詰(つ)める

2021年02月01日 00時00分00秒 | #小説
 詰(つ)める・・という表現も、いろいろな場合に使われる言葉だ。フツゥ~に使われる場合は、『もう少し席を詰めて下さいよっ!』などという形がある実態的な使われようだが、日程を詰めるとか詳細に詰めるなどという形がない心理的な場合にも使われる。これには思いようの差があり、詰めないで大雑把(おおざっぱ)でも気にならない人と、詰めないと気になる繊細(せんさい)な心の持ち主の二通りに分かたれる。まあ、出来るなら、なろうとままよっ! …くらいの太っ腹で進みたいものだ。気が小さい私も、そうするよう心がけている修行中の身である。^^
 とある会社の外渉(がいしょう)室である。二人の社員らしき男がデスクに座り、対峙(たいじ)して話し合っている。片方はどうも他社の取引先のようだ。
「いや! もう少し詰める必要がありますなっ! そうでないと上司の決裁がおりませんっ!」
「それはあなたの会社のご都合でしょう? そこまでの責任は負いかねます!」
「そうですか…。でしたら、今回は保留ということで…」
「保留!? それは困ります。契約していただかないと私が上司に叱(しか)られますっ!」
「それはあなたの会社のご都合でしょ!? 当方には何の関係もありませんっ!」
「ははは…言い争っていても埒(らち)が明きませんなっ!」
「ははは…そうですなっ! 時間もあることですし、もう少し私どもの関係を詰めるということで、今夜あたり、一杯どうですっ?」
「いいですなっ!」
「経費で落ちるよう、二人で策を練(ね)りますかなっ!?」
「ははは…経理部は怖(こわ)いですからっ!」
「確かに…」
 契約の接渉(せっしょう)は一端、保留となり、翌日へと持ち越された。そして後日、契約は無事、締結の運びとなり、二人は事なきを得た。
 詰めるには潤滑油が欠かせない・・という思いようへの教訓である。^^
 
                   完

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