何が疲れるかって!? それはもう劣勢に立たされて言い訳をするときだろう。それは自分が弱い立場にあるせいだ。立ち位置が高ければ、上から目線で相手を見下ろし、言い訳などする必要はない。逆に相手に言い訳をさせる立場にあり、その場合は当然、楽で、疲れるどころか逆に楽しくらいのものだろう。今日は言い訳をせねばならない、そんなお話である。^^
テレビの国会中継が映っている。超有名な、とある委員会である。^^ 内閣の大臣達が質問の矢面(やおもて)に立たされ、苦しい答弁を余儀(よぎ)なくされている。
「だから言ったじゃないですかっ! 甘いにもほどがあるっ! 相手は見えないんですよっ! まるで透明人間のようなものなんだっ! 分かってるんですかっ!」
「袈裟(けさ)大臣っ!」
主管大臣がゆっくりと進み出る。
「はい、分かっておりますっ! あの…言い訳になるようですが、私には見えません。では逆に、あなたに問います。あなたは見えてるんですかっ? そのウイルスがっ!」
「委員長っ!!」
「穴熊(あなくま)君っ…」
「開き直ってどうするんですっ! むろん私にも見えませんよっ! だから怖(こわ)いんじゃありませんかっ! 全国各地、患者だらけですよっ! VRE、耐性菌は怖いんですっ、大臣! こんなに患者が増えた責任は当然、あんたや内閣にあるっ!」
「そうだっ!」「解散だ、解散っ!!」「責任を取れっ、責任をっ!!」
委員会席の野党席からヤジが飛び交う。
「ご静粛(せいしゅく)にっ!! …静かにしてくださいっ!!」
委員長が懸命に制止する。それでもヤジは止(とど)まるところを知らず、逆に益々(ますます)、大きくなる。
「わ、私が悪いんですっ! だから、お、お静かにっ!!」
「委員長は悪くないっ!」「そうだっ!!」
そのとき、主管大臣が静々(しずしず)と答弁席へ進み出た。
「ぅぅぅ…わ、悪いのは、す、すべて私ですっ! し、死刑にでも何(なん)にでもしてくださいっ!! ぅぅぅ…」
主管大臣は言い訳をし、マイクロホンを倒しながら答弁席に泣き崩(くず)れた。
「そ、そこまで…。そ、速記を止めてくださいっ! 暫時(ざんじ)、き、休憩(きゅうけい)をいたしますっ!!」
委員長が速記を止めさせ、委員会は疲れるように休憩に入った。
まあ、疲れるこんな言い訳が現実とならないよう、議員諸氏のご検討をお祈りいたします。^^
完