水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疲れるユーモア短編集 (7)機器

2021年02月16日 00時00分00秒 | #小説

 最近の機器は複雑になり、取説[取扱説明書]がないと操作(そうさ)に支障(ししょう)をきたし、どんどん時間が過ぎていくことになる。やがて、カラスがカァカァ~~と啼(な)きながら山のお家(うち)へ帰っていく頃になっても、何も出来ていない・・などという情けない事態になる訳だ。^^ カラスに七つの子がいるのか? までは私も知らない。^^
 山坂はこの日も新しく買い求めたPC[パソコン]機器の操作に齷齪(あくせく)していた。
「なにがバージョン・アップだっ! これじゃバージョン・ダウンじゃないかっ!!」
 格闘三時間、すでに山坂は心身ともに疲れ果てていた。この日だけならまだしも、ずぅ~~っと何日も旧ソフトがPCにインストール[備え付け、設置]出来ないとなれば、愚痴も出るし疲れる訳である。
「蒟蒻(こんにゃく)っ!? なんだコーテック[音声を無線伝送する際に使用する音声圧縮変換方式]かっ! なになにっ!? ドライバーが提供されないだとっ!? 提供しろよっ!! それがケアー[介護・世話]だろうがっ!!」
 いっこうに要領を得ない作業の進捗(しんちょく)に半(なか)ば山坂は切れかけていた。疲れる+時間が流れる+切れる・・ではまったくどうしようもない。
「もう、いいっ! もういい…」
 山坂が諦(あきら)めの言葉を吐いたそのとき、ふと、iTunes Musicなる文字が目に入った。そのアイコンを弄っていると、音楽がふと、流れ出した。
「なんだ! 聴けるじゃないかっ! それを早く言えっ!」
 パソコンが言う訳もない。そのとき、キッチンの炊飯器の音がした。夕飯用に炊いていた米が炊き上がったのである。こんなに疲れるとは…と、山坂は作業を中断し、機器のスイッチをOFFった。
 このように、機器は使い熟(こな)せないと疲れる訳である。^^

                  完


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