水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (93)義務

2021年02月02日 00時00分00秒 | #小説

 思いようによっては義務が自由を束縛(そくばく)する場合がある。それは大義名分という肩書きを武器にして罷(まか)り通る。形(かたち)としては見えない威圧的な雰囲気でジクゥ~~と当事者の心に浸透する訳だ。^^ もちろん、勤労とか納税、教育とかの国民三大義務は除外しての話だが…。^^ だが、よくよく考えれば、納税にしたって誰も好(す)き好(この)んで納めている訳じゃないし、教育、勤労にしたってそうだ。現在の格差社会では勤労せずに裕福に暮らす人々も相当数いる訳で、僅(わず)かな給料で齷齪(あくせく)働く人はそんなニュースを耳にすれば勤労の義務を疎(うと)ましく思うだろう。^^
 とある官庁の屋上である。昼食後の二人の職員が話をしている。
「嫌(いや)になるなっ!」
「なにがっ!」
「だってさ、また物価が上がるんだぜっ!」
「確かに…。消費税アップで物価アップじゃ、やってけねぇ~よなっ!」
「そうそう! 給料アップは雀(すずめ)の涙だしなっ!」
「そうそう! まっ! 消費税は義務だから仕方ねぇ~けどさ…」
「義務は弱いとこに回るようになってんだなっ!」
「そうそう! スゥ~~っと風のようにすり抜けられりゃいいんだが…」
「これからは、その技(わざ)を身に着ける必要があるぜっ!」
「柔道の新技みたいになっ!」
「ははは…柔道とは限らんがっ!」
「そういや、今年はオリンピックか…」
「ははは…オリンピックは義務じゃねぇ~からなっ!」
「参加することに意義があるっ!」
「そうそう! 義務じゃなく意義だっ!」
「義の違いか?…」
「そうそう! 義の違い」
 二人はどうにもならない話をやめると、屋上から所属課へと下(お)りていった。
 義務に感じるか? は、個人の思いようによって違うが、どうにもならなくても意義は感じたいものだ。^^

                   完


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