水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (42)息抜き

2021年07月02日 00時00分00秒 | #小説

 人も動物である以上、何をしたとしても息抜きは必要になる。職場では休憩や休息などが規則で、はっきりと定まっている。労働基準法があるからと言えばそれまでだが、働きっぱなしでは人の身体が持たないということもある。ただ、この息抜きを甘(あま)く捉(とら)えるか、あるいは辛(から)く捉えるかの考え方は管理者によって大きく違い、誰だって甘い方がいいに決まっている。私だってそうだ。^^
 とある会社である。課長の馬尾が課員の牛川を呼んで話をしている。
「君ねぇ~、少し働き過ぎなんじゃないかっ!? 息抜きせんと、そのうち倒れるよっ。倒れるのは君の勝手だが、倒したのは私ってことになるからねぇ~」
 馬尾は次の人事異動で次長の呼び声が高い人物だった。当然、そのことは本人の馬尾にも分かっていたから、今の時期、課内のアクシデントだけは避(さ)けたかったのである。
「はぁ、分かりました。なかなか切りがつかないもんで、つい…。以後、気をつけます」
「んっ? いや、なに…。分かってくれりゃいいんだよ、分かってくれりゃ! ははは…」
 牛川が素直に甘く謝(あやま)ったものだから、馬尾は、『こいつ、私が出世したいからと思ってんじゃないだろうな…』と気づき、軽く流すことにした。こんなことで課員にどうのこうの[どうたらこうたら]と思われたくない…という辛い考えが浮かんだこともある。
 次の人事異動が巡ったが、辛い考えの馬尾は課長のまま、鳴かず飛ばずだった。取り分けて甘い牛川が息抜きをしなかったから・・という訳ではない。^^
 考え方も息抜きをしないと、皆さん、出世できませんよっ!^^

 
                  完


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