目的を達成しかけたとき、仕上げは重要なポイントとなる。仕上げが甘(あま)いと辛(から)いとでは、同じ目的でも達成された質(しつ)が変化をする。仕上げが辛いと、なかなかの出来ですな…と褒(ほ)めそやされるだろうし、甘いと、なんだ、手抜きか…と小馬鹿にされるだろう。小馬鹿にされるのが嫌(いや)なら、甘い手抜きはしないことだ。場合によっては、神罰、仏罰を受ける場合があるとも言うが、私にはその辺のところは分からない。^^
とある職人の工房である。親方が何やら作っている。その横には弟子がいて、親方の補助をしている。よぉ~~く見ても何を作っているのか? が分からないピカソ的な立体彫刻である。
「よしっ! 最後の仕上げだっ! おいっ! 粘土っ!!」
親方は何やら分からない立体彫刻を見ながら、手を止めて弟子に大声で指図(さしず)した。弟子としては、親方、なに作ってるんだろう? …くらいの気分である。そこへ親方の大声である。
「はいっ!!」
弟子は思わず我に返り、年度の塊(かたまり)を親方に手渡した。そして、数分が経過し、作品は完成した。
「どうだ! いい出来だろう! そうは思わんかっ!?」
「はいっ!」
弟子としては何なのかが分からず、何ですか? と喉(のど)まで出そうな声を必死に堪えて返事するのが関の山だった。
「辛く仕上げたから、今回は特選だろう!」
「はいっ! そう思いますっ!」
弟子は今回もダメだろう…とは思ったが、真逆(まぎやく)を言った。
そして半月が経ち、発表の日が来た。
「親方っ! どうでしたっ!」
「いや、それがな…。どうも儂(わし)以上の作があったようでな…」
「ということは…」
「なぁ~~に! 特選を譲ってやったのよっ!」
「ということは、次点ですかっ!!」
「いや…まあな。それにしても今日は暑かった…」
親方は暈(ぼか)しながら浴室へと消えた。審査結果は、かろうじて佳作の評価であった。
このように、本人が辛く仕上げた…と思っても、他人目には甘い場合もある訳だ。^^
完