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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (60)判断

2021年07月20日 00時00分00秒 | #小説

 人生に瞬間的な判断は欠かせない。将棋や囲碁の棋士のようにジィ~っと考えているゆとり時間はない訳である。甘(あま)い小さな判断ミスはいいとしても、その後を左右するような大局的な辛(から)い判断は間違えることが出来ない。判断ミスは許されない世知辛い世の中なのだ。^^
 一人の男が、とある金融機関の本店に入ってきた。いつもは現金自動支払機[ATM]を利用するのだが、この日は定期預金の預け替え・・という面倒な手続きに、面倒だなぁ~~と半分、嫌気(いやけ)を覚えながら訪れたのだった。要は、仕方なしに…ということだ。よくよく考えれば、預け替えが嫌なら預金しなければいい訳である。^^
 生憎(あいにく)その日は混んでいて、番号札のボタンを押すと36番だった。電光掲示板は21である。
「チェッ! 21かっ! 36-21=15 …チェッ! 15人も待つのか…」
 嫌になった男は支店へ行こう…と、瞬間、判断した。支店なら15人も待たされないだろう…という判断である。
 支店である。本店から支店へ向かった男が入ってきた。店内の人は幸いにも少なく、5人程度である。男は番号札のボタンを押した。すると、どういう訳か番号が41ではないか。男は目の錯覚かとシゲシゲと番号札の紙を見た。だが、やはり番号は41だった。
「そんな馬鹿なっ!」
 男がそう呟(つぶや)いたときだった、
『13番の番号札のお客様、2番窓口へお越し下さい』
 店内アナウンスが静かに流れた。すると、どうだろう。待っていたかのように、どこからかスゥ~~っと13番の客が窓口へ進んでいくではないか。
「そんな馬鹿なっ!!」
 辛い判断をしたとしても、結果が甘くなることもあるのである。^^

 
                  完


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