忘れていたことを、ふと思い出したとき、まっ! いつでもいいか…と甘(あま)く考え、そのまましないでおくか、すぐにやってしまわねばっ! と辛(から)く考え、バタバタと急いでやるかの二通りに行動は分かれる。手が空(す)いたとき、他に何もしていなかったときはいいのだが、重要な仕事中とか食事中だった場合、さて、どうするか? の二択(にたく)になる訳だ。完璧(かんぺき)に熟(こな)しておけば、こうした問題は起きない訳だが、世の中、得てしてこういうことが起こりやすい。私はどうか? と自問自答すれば゜、…まあそんなところだ。^^
とある生活雑貨の量販店である。一人の客が店へ息を切らせながら慌(あわ)ただしく入ってきて店員に訊(たず)ねた。
「…あのっ! アレ、ありますっ!?」
「はあっ? アレ? アレは置いてませんがっ…」
「ははは…店員さん、冗談がきついっ! アレですよっ! 昨日(きのう)、お宅に訊(き)いて買ったでしょうがっ!
「ああ! 昨日のっ! アレならこちらですっ!」
店員はようやく思い出すと、客を品物の置いてある位置へと誘導した。だが生憎(あいにく)、その品は売り切れていて、陳列棚になかった。
「すみません。…品切れのようですねっ! 入荷しますので、数日、お待ち願えないでしょうかっ?」
「チェッ! 売り切れか…。売り切れなら仕方ないよなっ。もう一度出直しますっ、どうもっ!」
客は素直に引き下がり、帰っていった。そして、数日が経ち、その客がふたたび、量販店へやってきた。
「あのっ! アレは?」
客は数日前の店員に訊(たず)ねた。店員は忙(いそが)しさに紛(まぎ)れ、忘れていたことを思い出した。だが、そうともいえ言えないから、笑って暈(ぼか)した。
「あっ、そうなの…。じゃあ、別の日に寄ります」
客はふたたび、素直に引き下がり、帰っていった。そして今も、この繰り返しが続くいているという。
言われたことを辛く捉えておかないと、こうなる訳である。甘いのはアイスクリームだけがいいようだ。^^
完