水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (54)真心(まごころ)

2021年07月14日 00時00分00秒 | #小説

 真心(まごころ)は、甘(あま)いとか辛(から)いとかいった次元で判断されるものではない。その人自身の気持が現れた[具現化された]ものだからだ。他人がとやかく言う性質のものではなく、感じるものなのである。その人の行為がジィ~~ンと心に突き刺されば、その突き刺さる気持そのものが真心と言えるだろう。最近の世界の動向は? と見れば、なんと上辺(うわべ)だけのパフォーマンスが多いことか…とガックリさせられることだらけだ。要は、自身を良く見せたい顕示欲(けんじよく)を持った人が多いということに他ならない。私は? と自(みずか)らに問えば、真心のある不言実行の行為に努めてはいるが、忘れていたっ! 間違った! とかで、まだまだ…の日々だ。^^
 とある市役所の部長室である。朝からブツブツと部長の設楽(しだら)が商工観光課の課長、柵(しがらみ)に辛口の苦言(くげん)を呈(てい)している。
「ったくっ! それじゃ住民の慰安にならんじゃないかっ!」
「そう申されましても、なにせ雪洞(ぼんぼり)の数が不足しておりますもので…」
「ったくっ! それを何とかするのが君の仕事じゃないかっ! 暗闇の夜桜は見えんだろうがっ!」
 設楽は、ったくっ!  を繰り返した。
「はあ、確かに…。桜祭りまでには何とかしてみせますっ! 」
「ったくっ! 頼んだよっ! こう言うの、これで何度目だっ!」
「はあ…おそらく八回ばかりかと…」
「そういうことは覚えとるんだから、君はっ! 真心だよ、真心! 真心がありゃ、なんだって出来るんだからっ!」
「はいっ! 真心でやってみますっ!」
 柵は分かったような声で甘く返した。実のところ、全然、分かっていなかったのだが…。^^
 真心は、言うことでそう簡単に備わるものではないようである。^^


                   完


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