負けまいと先を越したくなるのが人の心情だ。ただ、この越すっ! という感覚には受け取り方に違いがあり、甘(あま)い感覚と辛(から)い感覚がある。越されたか、まあ、いいさ…と冷(さ)めた気分で甘く受け流す人と、チェッ! 越されたかっ! ちきしょう、越してやるっ!! …と辛く興奮する人の大まかな二通りのパターンに分かれる訳だ。私も年を取り、最近は枯れてきたからか、お茶をズズゥ~~と啜(すす)りながら、まあ、いいさ…と、甘く思うようになりつつある。^^
とある町内運動会たけなわのグラウンドである。チーム対抗のムカデ競争が行われている。
「まっ! 負けるなっ! 追い越せぇ~~っ!!」
先を追い越されたチームの代表は、最後尾(さいこうび)から興奮気味にチームを叱咤激励(しったげきれい)した。一チームが六名編成のムカデ競争である。足首を細いロープで互いに括(くく)りつけているから、個人的には動きが取れない。チーム代表に、追い越せぇ~~っ!! と言われても、残りの五人としては、そんなこと言われても…気分である。全員、気は急(せ)くが、こればっかりは一人が速度を上げたとしても、どうにもならない。返ってチームのバランスが崩(くず)れ、転倒する危険性もある訳だ。事実、このあと、このチームは転倒して最下位になってしまった。
辛く越す! と意気込めば、気分では越しても、現実で返って越される・・という皮肉な結果になりますから、皆さん、注意しましょう、というお話です。心と身体は違う訳ですから…。^^
完