水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (81)油断

2021年01月21日 00時00分00秒 | #小説
 いつやらも別の短編集でこのタイトルの文章を書いたと思うが、別の角度 ^^ から、油断を紐解(ひもと)きたい。紐解かずそのまま括(くく)っておいて欲しい! と言われる方もおられようが、そこはそれ、軽く一杯などお飲みになられて、お許しをいただきたい(まあ、日本酒で一合五尺程度までですねっ!^^)。
 油断とは油を断った状態である。要は、油がない訳だから火も点(つ)かず、温(あたた)まれない。もちろん、調理だって出来ず、困ることになる。ものは思いようで、手抜かりなく油の準備をしておけば、何の問題もない訳である。忘れてはいけない。^^
 虫山(むしやま)は忘れっぽい男で、よく物事を忘れた。当然、必要なものは用意されないから油断状態が生まれる。まあ、こういった油断も、あるにはある訳である。^^
 とある日の昼下がり、虫山が公園のベンチにポツリと座っている。そこへ、一人の顔見知りの男が通りかかった。
「虫山さんっ! 今日、行かなくていいんですかっ!」
「どこへっ?」
「どこへって、昨日(きのう)言っておられたじゃないですかっ!」
「何をっ?」
「何をっ! 病院じゃなかったんですか?」
「病院? …あっ! そうそう! ついうっかり油断してました」
 訊(たず)ねた男は、油断じゃなく、もの忘れでしょ! とは思ったが、そうとも言えず、笑って暈(ぼか)した。
「今からだったら11時には十分、間に合いますよっ!」
「11時? そんなことまで私、言いました?」
「言いました、言いましたっ! リハビリでしたよねっ!」
「はいっ! よく、ご存じでっ!」
「確か…足を捻挫(ねんざ)されたとか、なんとか…」
「そんなことまで?」
「ええ、ペチャクチャと。ははは…嫌だなぁ!」
「つい油断しました。ははは…」
 油断じゃないっ、油断じゃないっ! と、訊ねた男はまた思ったが、馬鹿らしくなって聞かなかったことにした。
「それじゃ!」
 訊ねた男は油断して、虫山に病院へ急いでっ! と忠言[アドバイス]することを忘れていた。
 思いようが冷静でなければ、油断して忘れてしまうようである。^^
  
                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (80)閃(ひらめ)き

2021年01月20日 00時00分00秒 | #小説
 皆さんは、オッ! それがいいな(わ)っ! と、急に閃(ひらめ)かれたことはないでしょうか? ^^ 私は時折り、そんなことがあります。ただ、いつも閃かないのが玉に瑕(きず)ではありますが…[謙遜(けんそん)! ^^]。
 冗談はさておき、この閃きは、思ってもみないときにフッ! と湧(わ)くものである。湧いた閃きは、いい閃きもあるが、時には悪い閃きもある。それが人だ、と言ってしまえばそれまでだが、悪い邪(よこしま)な閃きは余りいいとは言えないだろう。人はそれを魔が刺した・・と表現する。まあ、それも程度ものなのだが…。^^
 とある小学校で職員会議が開かれている。
「教頭! こんなクソ暑いのに、やるんですかっ!?」
「苔石(こけいし)先生!  なにもやる! とは言ってないでしょ! そういう選択肢もある、と言ったまでですっ!」
「ということは、春でもいいということですよねっ!」
「ええ、まあ…。最近は多くの学校が春にやってますからね…」
「春といったって、結構、大変ですよ。組み変えで、やっと生徒が馴染(なじ)んできたとこですから…」
「庭木(にわき)先生、いいこと言ってくれましたっ! そのとおりっ! 春も大変ですよっ! 苔石先生!」
 そのとき急に、黙って聞いていた教師、池水(いけみず)に閃きが起きた。
「教頭! こんなの、どうでしょ?」
「どんなの、ですっ!?」
「チェンジするんですよっ!」
「チェンジ!? なんです、それは?」
「チェンジですよ、チェンジっ!! ほらっ! いつやら、アメリカの大統領が言ってた!」
「ああ! あのチェンジですか。ははは…古いですね、あなたもっ!」
「古くったっていいんですっ!」
「もう少し、具体的にお願いしますっ!」
「だから、9月の運動会と11月の文化祭をチェンジするんですよっ! チェンジっ!」
「あっ! なるほどっ!」
 そのとき急に、黙って聞いていた別の教師、蛙(かわず)に閃きが起きた。
「教頭! 運動会を10月にひと月、遅らせりゃ、それでいいんじゃないでしょうかっ!」
 蛙の意見に全員、なるほど! と思ったのか異論は出ず、運動会は10月中旬開催でスゥ~~っと決着した。
 ものは思いようで、閃きは案外、単純な方がいいようだ。^^
 
                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (79)過ぎていく

2021年01月19日 00時00分00秒 | #小説
 毎年思うことだが、年の瀬が近づくと、『ああ、今年も過ぎていくのか…』と、さも自分が高尚(こうしょう)な人のように思ってしまう。ものは思いようで、よ~~く考えれば、自分はそんじょそこらにいる人間とちっとも変わりがないのである。^^ だが、そう思ってしまう背景には、手帳やカレンダーが薄っペらくなったり、マスコミが歳末をガナりたてる原因も多分にあるようだ。ということは、馬の耳に念仏・・と、年が過ぎていくこと自体を意識しなければ、年が変わろうと変わるまいと^^、ちっともバタバタする必要はない訳である。これが発想の改革をする第一歩になる。毎年、同じ繰り返しでは、ただ時が過ぎていくだけで、老いてチィ~~ン! とお悔(く)やみをされるだけなのである。^^ 憎まれようと憎まれまいと、織田上総介信長公は戦乱の変革を求められ、天下統一を目指された偉いお方なのだ。尋常の発想ならば、武将としておそらく天下統一は果たせなかったのでは? と私は歴史学者のように偉そうに考えているのである。当然、反する者や恨(うら)む者も増えることにはなったのだが…。しかし、誰かがその悪役を演じなければ、戦国時代はそのまま過ぎていくことになったのでは? と思えている。^^
 とある歳末の繁華街である。凍(こご)えそうな寒さの中を一人の男が半袖(はんそで)姿で暑そうに団扇(うちわ)を扇(あお)ぎながら顔の汗を拭(ふ)いている。よ~~く見れば、汗はちっとも出ていない。不思議に思った通行人が、訝(いぶか)しげな顔で、思わず声をかけた。
「あの…何やってんですか? 風邪、引きますよっ!」
「あっ、どうもっ! いや、大丈夫なんです私。エアー夏やってんですからっ!」
「エアー夏? …なんです、それはっ!?」
「だから、エアー夏ですよっ! おたく、エアー夏、知らないっ!?」 
「はい、知りません! なんなんです、それはっ!?」
「弱ったなぁ~。ほれ、エアーギターとかあるじゃないですか、アレですよっ!」
「ああ、あの感じですかっ! それにしても、こんな寒空で…」
「エアー夏やってますとね、どういう訳か寒くないんですよ、私」
「ははは…そうなんですかっ! それじゃ!」
 通行人は、『世間は広いや。こんな人もいるんだな…』と思いながら、そうとも言えず通り過ぎた。
 過ぎていく時の中で、何を思おうと思いようは自由なのである。^^
 
                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (78)谺(こだま)

2021年01月18日 00時00分00秒 | #小説
 別の短編集にも登場したが、山の谺(こだま)は相手がいなくても、声を発すれば反響して返ってくる。胸の鬱憤(うっぷん)を晴らそうと、山に向かって「馬鹿野郎っ~~~!!」と発すれば、当然、『馬鹿野郎っ~~~!』と返ってくる訳である。そこでしみじみ、俺は馬鹿なんだなぁ~~…と思う訳だ。^^ まあそれは冗談としても、ものは思いようで、自然に生じる谺は、人の感情など関係なく、ありのままの姿を返してくる訳である。この場合は音であり、映像の場合なら鏡(かがみ)がそれに当たるだろう。^^
 一人の社員が課へ戻(もど)ってきた。課長の木地(きじ)に怒られた漆田(うるしだ)である。漆田はショボく自分のデスクへ腰を下(お)ろした。漆田の趣味は山登りで、仕事そっちのけで山登りに齷齪(あくせく)し、他の社員とは異(こと)なり、有給休暇を使い果たしていた。
「漆田さん、また怒られたんですかっ!?」
 後輩社員の丸椀(まるわん)が心配げに漆田を窺(うかが)った。それも道理で、漆田は毎日のように木戸に怒られていたのである。
「ああ、まあな。少し休み過ぎたか、ははは…」
 軽く笑うと、漆田はデスクの書類を見遣(みや)った。不備はない…と漆田は軽~~く思った。それなのに、なぜ怒られたのか? いや、怒られるのか? が漆田には、はっきりと分かっていた。^^ 休み過ぎである。^^
「ちょっと、トイレ…」
 そう言い残すと漆田はデスクから立ち、課を出ていた。そして気づけば、屋上に漆田はいた。
「課長の馬鹿野郎っ~~~!」
 漆田は軽く叫んでいた。山とは違い、谺の反響はなかった。漆田は、課長の木地は馬鹿なんだ…と軽く思った。^^
 木地椀に漆が塗られなければ、木地椀はただの木の椀だ。^^ 同様に、ものは思いようで、課長は課員がいるから存在価値がある訳である。^^

                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (77)頑(かたく)なに

2021年01月17日 00時00分00秒 | #小説
 頑(かたく)なに・・という、私達が使っているいい言葉がある。何があろうと、ただ、ひたすらに・・という意味で、なぜかこの言葉を耳にすると、ぅぅぅ…と、思わず涙するのはなぜだろうか。TT それほどこの言葉には、その人物のひたすらやり続ける健気(けなげ)な姿が浮かんでくるのである。まあ、それも私の思いようであり、皆さんは、そうかい? などと何も思われないかも知れない。しかし、私はどういう訳か、人物の風貌(ふうぼう)がクローズアップされ、この言葉に弱いのだ。^^
 都心のとある中央官庁である。夜も更けているというのに、ビルの一角にポツン!  と輝く蛍光灯の灯りが見える。すでに誰もいなくなったビルの一室では、頑なに仕事を続ける一人の男の姿がある。警備で巡回するガードマンが、おやっ? と点いた灯りを不審に思い、ドアのノブを回した。
「なんだっ! やはり律儀(りちぎ)さんでしたか? ははは…たぶん、そうだとは思っておりましたが…」
「いや、どうも…。いつもご苦労さまです。もう30分ほどで終わりますんで…」
「いやいや、ご苦労さまです。お疲れが出ませんように…」
 ガードマンは長居(ながい)は無用…とばかり、ドアのノブを静かに閉めた。閉めた途端、警備員はどういう訳か、思わず涙に咽(むせ)んだ。
『定年前だっていうのに、あれだけ働いてヒラかよ…』
 これがガードマンの思いようだった。
 このように、頑なにやり続ける姿は、人をして思わず涙させるのである。^^
 
                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (76)滑(なめ)らか

2021年01月16日 00時00分00秒 | #小説
 滑(なめ)らか・・という言葉がある。ザラザラとかゴツゴツしていない状態だ。ニヤリ! と嗤(わら)い、滑らかな肌だぜ…などと悪役が美形(びけい)の女性を見て呟(つぶや)いたりする。^^ だが、滑らか・・は、いい場合ばかりに遣(つか)われる言葉ではない。登山道で岩が滑らかなら、誤(あやま)って滑落(かつらく)する場合だってある。人の性格の場合は、滑らかな方がゴツゴツした人よりは嫌われないだろうが…。ものは思いようで、これだってゴツゴツした性格の人の方が実行力がある場合もあり、一概(いちがい)には言えない。まあ、度を越さない程度・・という条件は付くが…。戦国武将の織田信長さんなんかが、その最たる例かも知れない。^^
 とある町のうどん屋である。客入りがいいところを見れば、どうも美味(うま)いようだ。
 常連客の二人が、うどんを啜(すす)りながら話をしている。
「いや! 味もいいけどさっ! この喉越(のどご)しがなんともっ!!」
「だなっ! 滑らかでさっ!」
「そうそう!! 麺も硬すぎず柔らか過ぎず…」
 二人は、時折り、ズルズル~~と啜りながら、丼(どんぶり)の汁(つゆ)をゴクリッ! と飲む。
「ここへ勘定、置いとくよっ!!」
 別の客が食い終わって言う。
「へいっ!! 毎度っ!!」
 奥から声がするだけで、店の者は出てこない。この店では店と客の間に信用という名の暗黙の了解が成立しているのである。^^ しばらくして、店員が食べ終わった丼とうどん代を手盆に乗せ、勘定もせずにソソクサと厨房(ちゅうぼう)へ下がっていく。店と客との関係が、なんとも滑らかなのである。^^
 このように、滑らか・・は、人間関係の思いようにも影響している訳である。^^

                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (75)しない

2021年01月15日 00時00分00秒 | #小説
 (74)するの逆の場合を考えてみたい。相変わらず、アンタは暇(ひま)だなっ! と言われれば、それまでだが、暇なのだから仕方がない。^^
 しないのだから、物事は何も動かない・・と思いきや、動く場合もあるにはある。だから、世の中は奇(き)なるもの・・と言う他はないだろう。^^ ものは思いようで、しなければどうなる? などと考えない方が、案外、物事はスムースに行く場合が多いのは、不思議と言えば不思議である。^^
 とある町の広場に一人のホームレスの男が寝そべっている。ダンボールが一応、彼の住居となっていて、雨に打たれてもいいように、どういう訳か表面には防水の特殊加工が出来ているのだから驚きだ。^^
「まだ、いたのかね?」
 自転車でいつも警邏(けいら)に回っている交番の巡査が、なにもしないで寝そべっている男に声をかけた。
「んっ? …ああ、旦那でしたか」
 顔見知りの巡査に声をかけられ、男は目を開けて答えた。
「なにもしないと、キノコが生えるよっ! ははは…これは冗談だがっ!」
「ははは…生えないでしょ!」
「ああ。まあ、生えはしないがねっ。冗談だよ、冗談!」
「そんなこと言ってると、旦那の方に苔(こけ)が生えますよっ!」
「ははは…生えないだろっ!」
「はい。まあ、生えはしないですが…」
「それじゃ!」
 巡査は軽く敬礼すると、古い自転車をギコギコと漕(こ)いで去った。
 何もしないで居続けても、キノコや苔は生えない。ただ、ものは思いようで、心の中にキノコや苔が生えてよくないみたいだ。人はそういう風に出来ているようである。^^
 
                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (74)する

2021年01月14日 00時00分00秒 | #小説
 物事をすることにより、自分を取り囲むすべてが動く。しなければ何も動かず、発展もしなければ後退もしない。要は、水が停滞(ていたい)して氷のような状態になってしまう状態だ。その凍った氷がポタァ~~リ、ポタァ~~リと少しづつ融(と)け、水になる・・これが、コトをすることによって起こる現象だ。融けたくなければ、何もしなければいいが、場合によっては融けることによって救われることもあるのである。しなければ、そのままアウトになつてしまうのなら、ものは思いようで、することでセーフになった方がいいに決まっている。^^
 川森は、とある日、さてどうしたものか? と考え倦(あぐ)ねていた。するか、しないかの二択(にたく)である。しなければコトは起きず、しばらくは会社組織の平穏が保たれることは保障されていた。しかし、長期的に衰退することも川森の読み筋では事実だった。するとどうなるか? そこには大きな決断が必要である。迷いに迷った挙句、川森は、することにした。決断したのである。
「どうしたの? こんな、早く…」
「ああ、まあな…」
 川森は狸(たぬき)のように妻を煙に巻いて家を出た。
 数年後、一時は弱体化した会社組織は再建され、川森の決断どうり元気を回復したのだった。決断をしなければ、恐らくはチィ~~ン! でダメだったろう…とは、再建後の川森の懐古である。
 するときはしないと、ダメダメっ! という教訓めいたお話である。ただこの場合、先を見通す能力は必要で、それは個々の生まれ持った能力の有りや? 無しや?にかかっているようだ。^^

                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (73)大掃除

2021年01月13日 00時00分00秒 | #小説
 年末ともなれば、決まりごとのようにどこの職場やご家庭でも大掃除が行われるようになる。ものは思いようで、少しづつ数か月前からやれば、取り分けて年末に大掃除をする必要に追われることはないのだ。^^ ところが、どういう訳か、人々は年末に大掃除をしたがる。^^ 思うに、どうもしたくてしている訳でもなさそうなのだが、しないと年を越せない…という潜在意識が深層心理として脳内に潜(ひそ)んでいるのでは? と私には思える。^^
 とある町にある公園の一角である。市営公園ということもあり、選抜された市の課員が年末の大掃除をやっている。毎年、同じ課の中から数人、選抜されているようだ。
「田所さん、この辺りで昼にしますか?」
 同じ課員の畑川が、他の課員達が手を止めたのを見て、田所に声をかけた。
「ですねっ! おっ! もうこんな時間か…」
 声をかけられた田所は、手を止め、思わず腕を見た。十二時少し前だった。
「毎年、この月初めになると大掃除ですが、公園清掃は普段からでもできる訳ですよねっ!」
「ええまあ…。慣例行事的なところがありますから…」
「どうもこの時期になりますと、選抜されないか? とビクつきます」
「確かに…。ビクついて、今年のように選抜されてりゃ世話ないですがっ!」
「言えますっ! しかし、今年すりゃ、数年は大丈夫・・という安心感もありますよ」
「はあまあ、それはそうです。ははは…公園を大掃除する前に制度を大掃除する必要がありそうですね」
「日本人は慣例に弱いですから…」
「まあ、毎年と同じように当たり障(さわ)りなくやってりゃ、地位が安全というお偉方の潜在意識があるからでしょう」
「言えます‥。国の公債発行と似てますねっ!」
「債務が木(こ)の葉のようにどんどん地面に溜(た)まっていく」
「木(き)の葉のうちに何とかすりゃいいのに…」
「個々のお偉方には、それが分かってんじゃないですかっ? でも、お偉方達には分かっていない! いや、分かっていても、どうにも出来ないっ!」
「矛盾(むじゅん)してますっ! ははは…この矛盾を大掃除する必要がありそうですね」
「ですね…」
 同じ職員達とともに二人は水道で手を洗うと、ベンチに腰かけて昼食を食べ始めた。師走にしては暖かい日射しが選抜された課員達や二人を包んでいた。
 大掃除は物だけではなく、人の思いようにも必要! と言えるようである。^^
 
                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思いようユーモア短編集 (72)寂(さび)しい

2021年01月12日 00時00分00秒 | #小説
 失敗した訳でもなく、なんとなく気分が寂(さび)しいことはありませんか? 私なんか、寂しくて寂しくて…というようなことではないが、やはり寂しい今日この頃である。^^ この寂しい・・という気分を考えれば、つまり寂しい訳だ。^^ 寂しく感じるのは思いようによるものだが、同じ状況だとしても人それぞれで違う。
 庭に落ちた晩秋の落ち葉を見ながら、老人が一人、物思いに耽(ふけ)っている。ついこの前までは一緒に妻とこうして見ていたな…と、老人は寂しい気分に苛(さいな)まれていた。はは~~ん、お亡(な)くなりになったのか? と皆さんはお思いのことだろう。さにあらず、さにあらず[時代劇的な古い表現]。^^ 妻はとあるヨ-ロッパへ旅立ったのである。老人も行きたかったのだが、どういう訳か、俄かの腰痛が再発し、断念したのだ。キャンセルせざるを得なくなったとき、寂しい気分に老人は苛まれたが、今、それと同じような寂しい気分に老人は苛まれていた。そのとき、家の外から、「♪石焼芋~~石焼芋~~~♪」という音が流れてきた。老人の寂しい気分は一瞬にして吹っ飛んだ。
 ものは思いようで、寂しい気分が消え去るのは、案外、単純な出来事によるのだ。^^ 

                      

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする