剣と禅の達人、山岡鉄舟。
明治維新の、隠れた立役者。
天皇陛下を投げ飛ばした、おそらく歴史上唯一の人物。
忖度がない。
その剛毅なる山岡鉄舟の最期は、先日ちこっと紹介しました。
改めて、その最期を見届けた、鉄舟の禅の師匠の、南天棒の描写を、とくと味わいください。
~~~以下引用(ひらがなを漢字に直したり改行処理したりしてます)~~~
(7月)19日の朝は、自ら浴室に入って身を清め、白衣を着て蒲団の上に結跏趺坐し、金剛経一巻を懐中に納め、右手に扇子、左手に念珠を握り、静かに左右を見渡して、親族知己門弟らに、
「諸君好在(こうざい)、我れ今日先逝(せんせい)す」
と、言い終わり、微笑して瞑目した。
時これ6時31分、齢まさに53歳だった。いわゆる坐脱だ。
さすが平常の修養しただけあって、実に近代にない立派な大往生だ。
ただの者には、微笑の死はとてもできるものじゃない。
殊に山岡の胃癌は、腹が膨れてひどく痛み、苦しい詰めだった。
それに笑って、従容として死に就くとは……。
鬼をもひしぐ南天棒も、四句誓願文を唱えながら、慄然とし、かつは喜び涙が衣を濡らした。
ワシの死もかくありたしと念じた。
~~~引用終わり~~~
ワシの死もかくありたし。
ってか、『笑って死ねる人生論』なんて書いちまった以上、この「微笑の死」を遂げた鉄舟を見本とせざるを得ない。
これから毎年7月19日の命日には、鉄舟を偲ぶことにする。
本稿の描写は、以下の本の138-139頁から。