(宮古島に打ち上げられた世界で最も重い津波石「帯岩」は、八重山巨大津波か、それ以前の津波で打ち上げられたものだと考えられている(Wikimedia Commons))

① ""「八重山巨大津波」250年ぶりに原因解明!インドネシアを上回る海底地すべりだった ""
2018年11月04日 06時00分
11月5日は「世界津波の日」だ。インドネシア・スラウェシ島で今年9月に発生した津波は、海底で起こった地すべりが原因だとされているが、産業技術総合研究所や海上保安庁などの合同チームは、江戸時代に石垣島や宮古島を襲った「八重山巨大津波」を引き起こした可能性が高い海底の陥没地形を発見した。
1771年4月24日に発生した八重山巨大津波は、石垣島と宮古島を襲った最大高さ30メートルの津波に巻き込まれて1万2000人が死亡した記録が残る。
この2島を含む先島諸島の海岸では、津波が運んだ「津波石」と呼ばれる直径10メートル以上のサンゴの塊が点在していることから、過去にも繰り返し津波に襲われたと考えられている一方、沖縄本島や奄美大島には過去に津波が発生した痕跡は存在しない。
さらに琉球海溝に沈み込むフィリピン海プレートにもひずみが蓄積している証拠が発見されていないことから、八重山津波を引き起こした原因については、複数の学説はあるものの、最終的な結論は出ていなかった。
② 突然途切れる隆起帯
(海底地すべりの位置。宮古島や石垣島、西表島の南側に記された紫の点線は、八重山巨大津波が押し寄せた海岸。黄色は海底地すべり地形、赤は横ずれ断層を示す(産総研))

日本周辺の海底の地形や地質構造の調査・研究を進めてきた産総研と海保海洋情報部などのチームは、石垣島と宮古島から南へ100キロほど離れた海底に伸びる琉球(南西諸島)海溝沿いの海底地形データを解析。
その結果、海溝に沿って東西方向に伸びる隆起した地形が、石垣島沖で突然消滅し、陥没している事実に気づいた。くぼ地の大きさは長さ約80キロ、幅約30キロにわたって広がっていて、隣接する急斜面の地形から、過去に大規模な地すべりがあったことが判明。数値計算によって、この海底地すべりで発生する津波の高さは、八重山巨大津波に匹敵することがわかった。
③ 将来の巨大津波の可能性
(八重山巨大津波の発生原因を示した概念図(産総研))

陥没地形の西側には、隆起帯を斜めに横切る巨大な横ずれ断層が確認されたことから、合同チームは地すべりの発生にはこの横ずれ断層が関与した可能性が高いと指摘。そのうえで、石垣島や宮古島、与那国島など台湾に近い先島諸島付近では、今後も巨大津波が発生する可能性がある一方、沖縄本島などのほかの地域では発生の可能性は低いと予測している。
(発見された地すべり地形(産総研) )

(横ずれ断層が海底地すべりを発生させるメカニズム(産総研) )
