◎◎ グループ時価総額ことし8割増、さらなる上場数拡大狙う-GMO
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子会社数は100社超える、グループの上場企業は10社へと増加
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上場価値がある会社は上場すべき-GMOIの熊谷社長
インターネットのインフラ事業を手がけるGMOインターネットのグループ成長が加速している。上場企業の時価総額はことし8割増えたが、将来は上場数を20-30社に広げて企業間シナジーをさらに深化させる狙いだ。
決済事業のGMOペイメントゲートウェイや電子印鑑を手がけるGMOグローバルサイン・ホールディングスなどが急激に時価総額を伸ばしているほか、7月にマザーズに株式新規公開(IPO)したばかりのGMOフィナンシャルゲートも急成長。上場企業10社の合計時価総額は10月14日時点で1兆6900億円と、ことしだけで約7800億円膨らんだ。
GMOIの会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏は、自身のグループ戦略について「長期にわたって発展する旧財閥など過去の成功事例を研究し、それを現代風にアレンジしている」と語る。「上場価値がある会社は上場したほうがいい。上場準備している会社も複数ある」として、将来的に「20-30社ほど上場している三菱や住友などと同程度まで行く可能性はある」という。現在、同社の連結子会社は101社。
こうしたグループ企業を支えるのが熊谷氏の経営哲学だ。グループ企業のトップは毎週会議で集まって様々な課題を話し合う。しかし「GMOイズムという夢、ビジョン、哲学を共有したそれぞれが自主的に動く。私がマネージメントする感覚はない」と熊谷氏。各企業の将来像や果たすべき役割はGMOイズムに委ねていることで、同氏が直接指図することはないという。
社名 | 時価総額(億円) | 時価総額(19年12月30日) | GMOI保有分(%) |
GMOI(9449) | 3516.19 | 2349.79 | |
GMOペイ(3769) | 9525.39 | 5557.71 | 42 |
GMOGS(3788) | 1580.89 | 297.7 | 51 |
GMOFH(7177) | 785.27 | 697 | 63 |
GMO-FG(4051) | 977.57 | GMOペイが60 | |
GMOペパ(3633) | 344.01 | 131.19 | 61 |
GMOアド(4784) | 110.09 | 65.19 | 9.3、
GMOアドHDが46 |
GMOTE(6026) | 31.70 | 21.14 | 52 |
GMOメデ(6180) | 37.77 | 27.1 | 61 |
GMOリサ(3695) | 33.02 | 30.97 | 53 |
グループ合計 | 16941.91 | 9177.79 |
アントレプレナーの集合体
GMOIが自主性を重視するのは、成長とともに事業領域が広がっているため。インターネットのインフラ事業を中心に、銀行や証券、広告代理店、クラウド、電子印鑑なども手がけ、それぞれの分野の専門性は高い。同社はこうしたグループ企業を「アントレプレナーの集合体」と位置づけており、「決算書に表れない個々人の起業家精神の源泉を親子上場で引き出している部分がある」と熊谷氏は語る。
一方で、そうしたグループ構造が弱みになりかねないと懸念する声も市場にはある。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「連結で様々な分野で上場しているが、しっかり把握できているのか。グループ戦略がうまくいかなかった企業も存在するため、親子上場は一番のリスク」とみる。
新型コロナが進化圧に
熊谷氏が想定する世界は、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の進展だ。新型コロナウイルス禍で遅れが再認識された行政サービスのデジタル化を政府が目指すなど、官民挙げてDX化は進もうとしている。「DX化のきっかけは5Gだと考えていたが、現実には新型コロナウイルスが進化圧を与えている。5年、10年で起こることがいま一気に起こっている」と足元の変化を表現する。
グループのシナジーでDX化を取り込むことで、熊谷氏は「二桁成長は10年の単位でずっと続けると思う」と語る。ただ、GMOIの時価総額は現在約3500億円と、市場評価では約9500億円のGMOPGの持ち分相当額にも届かない。「明らかに過小評価だ」と同氏は言う。親子上場の批判に対しても、「経営の現実が分かっていない」と反論する。
趣味でヘリコプターのパイロット免許を取得するなど空の事情に精通していることから、熊谷氏は将来のグループの姿を空にも描こうと考えている。飛行機やヘリの操縦にもコンピュータ化の波が押し寄せる中、熊谷氏は「日本は昔の危ない時代の飛行機やヘリを前提として規制が加えられている。今のテクノロジーに応じた産業利用をきちんと考えたほうがいい」と訴える。数年内には構想を明らかにする考えだ。
15日の株式市場では、グループ内で時価総額が最大のGMOペイが一時4.9%高の1万3450円、GMOGSが同5.1%高の1万4210円と上場来高値を更新。GMO-FGは値幅制限いっぱいのストップ高となる一時20%高の3万50円と7月上場後の高値となった。