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明石のブルースマン「ハウリンメガネが贈る」…「どこまでもヴァイナル中毒!(第3回)」

2018-01-28 08:30:14 | 『ハウリンメガネ』コラム集

読者諸賢、ご機嫌いかが?ハウリン・メガネである。

今回ご紹介するブツは前回ご紹介したウィルベリーズのメンバーであり、
偉大なるビートルの一人、そう!ジョージ・ハリスンの盤である。
少し前置きが長くなるがご容赦願いたい。

ジョージ・ハリスン。
彼は私にとって初めて"ビートルズというバンド"を意識させたミュージシャンだ。
私が多感な高校生だった頃にジョージは亡くなった(2001年没)。
正直に言って、あの頃の私はビートルズの凄さを理解しておらず、
単純に「いい曲を書いたバンド」程度にしか考えてなかった。

ジョージについても同様で
「TaxmanとかHere Comes The Sunを書いた人」
程度の認識だった。
その程度の理解でも当時の音楽雑誌やラジオでは
全面的にジョージの追悼特集が組まれているのを知れば
「あれ、この人は凄い人だったのかしらん」
くらいはやはり思う。

やっとそこで「ジョージ・ハリスンという人」について興味が出てくる訳だ。
とりあえず有名なブツからだ、と思い立ち
「All Things Must Pass」や「ジョージ・ハリスン帝国」を聴いてみるも
当時の私にはまったりした音楽にしか聴こえなかった。
「ビートルズは好きだけどジョージのソロはそうでもないや」
というのが当時の私の考えだった...

さて、時は少々くだって学生時代。
当時自宅でMTVが見れる環境だった私は、なんとなしにMTVを見ていた。
(確か「ちょっと面白いPV特集」か何かだったと思う)
そこにいたのだ。ジョージが。踊るジョージが。
そう、皆様ご存知「Got My Mind Set On You」のPVである。

今考えればダンスシーンはスタントマンが踊っていたのだが、純粋(馬鹿ともいう)だった私は
「ジョージって踊れるんだ!カッコイイ!」と本気で思い込んだ。
その翌日、私が「~Set On You」収録アルバム「Cloud Nine」を購入して聴き狂ったのは言うまでもない...
ポップロックは偉大なのだ!

さて、前置きが本当に長くなってしまったが、今回ご紹介するのは、この「Cloud Nine」である。
前述文を読んでいただければ分かるだろうが、ジョージのアルバム中、一番好きなのがこの盤である。

どのくらい好きかというと、
「EU盤」と「US盤」を両方!オリジナル盤で持っている!
そのくらい好きである。
(ヴァイナルマニア諸兄諸姉の為に書くと「EU盤」は西独プレスMat1/1、「US盤」ももちろんMat1/1である)

よって今回は
「この曲はこっちの盤の音が好き」
という個人的独断と偏見によるEU/US混在レビューである。
さっそくいってみよう!

[A-1 Cloud 9]
泥臭いギターのチョーキングから始まるジョージのソロにしては珍しくブルージーな曲。
クラプトンのリードギターとジョージのスライドが美しく絡む。

この曲は「US盤」の音の重心の低さが合う。
全体的に落ち着いて聴こえる為、USの方がイナたく聴こえてイイ。

[A-2 That's What It Takes]
ビートル期のジョージの作風にも通じる寂しさと明るさが同居した名曲。

こちらは「EU盤」で聴くと、ちょっとクリームの「Budge」を思い出させる…
クラプトンのリードがとても彼らしい音をしており、素晴らしい。
裏で鳴っているアコギも「EU盤」の方が美しく響く。

[A-3 Fish On The Sand]
ウィルベリーズのアルバムに入っていてもおかしくない(というかウィルベリーズ版でも聴いてみたくなる)タイトなロックチューン。

「US盤」はウィルベリーズ1stの音にも通じるシンセと思わしきベースの刻みに乗るカラリとしたジョージらしいギターがかっこいい。
「EU盤」は上記のシンセベースが目立ってしまうくらいに音の重心が高い。ちょっとキラキラしすぎている。ここはUSの勝ちかな。

[A-4 Just for Today]
ジョージ自身の「All Things~」や、ジョンの「Imagine」を彷彿とさせる一曲。ピアノはエルトン・ジョン。(ジョン違いだ)

ここはジョージの声の美しさが際立っている「EU盤」で是非。(この曲での彼の歌って「ジョージらしいなぁ」と思う。寂しくて、優しい声だ)

[A-5 This is Love]
ジェフ・リンらしいサウンドアレンジが光る良曲。

これもコーラスの「This is Love~La La La~」のハーモニーが素敵な「EU盤」でどうぞ。(エンディングのハーモニーの素敵なこと!)。
途中のスライドソロも「EU盤」の方が美しい。

[A-6 When We Was Fab]
ジョージとリン、そしてリンゴによる「あの頃のビートルズ」へのセルフトリビュートソング。
When We Was Fab---あの頃、僕らは最高にイカしてた---ジョージにしか歌えない、「あの頃の僕ら」への手紙である。

問答無用で「EU盤」で聴いて欲しい。私は「EU盤」でこの曲を聴いた時、少し涙ぐんでしまった。
ビートルだったジョージとリンゴ、ビートルになりたかったリンにしか鳴らせなかった音がここにある。

[B-1 Devil's Radio]
A-3同様ウィルベリーズライクなポップなロックンロール。

音のタイトさがGoodな「US盤」がよろしい。
「EU盤」は「EU盤」でジョージの声の軽やかさがいいのだけどここはバンドサウンドと歌のバランスの良いUS推しで。

[B-2 Someplace Else]
タイトルといい、曲中の展開がちょっと「Something」っぽいのは狙ってるのか?ジョージ必殺のメロウソング。

ギターとピアノの響きが美しい「EU盤」をプッシュ。鳴っている音全てがハーモニーを構築しているようなジョージの作曲術が炸裂していてよい。

[B-3 Wreck of the Hesperus]
少しボブを意識しているような歌い方がジョージにしては珍しいロックンロール。

これもB-1同様バンドサウンドのタイトな「US盤」がおすすめ。

[B-4 Breath Away from Heaven]
アジアンオリエンテッドなフレーズはご愛嬌。ビートルズの中でもインド東洋大好き男だったジョージらしいオリエンタルなメロディがリリカルに響く一曲。

全体のバランスがよく、メロディがきれいに響く「EU盤」がよろしいアルヨ。

[B-5 Got My Mind Set on You]
私にこのアルバムを購入させたグレイトな一曲。この曲はジョージのオリジナルではなくジェームズ・レイというアメリカのR&Bシンガーのカバー曲。
原曲と聴き比べるとジョージとリンのアレンジセンスがいかに高いのか良く分かる。(もちろん原曲は原曲でGood R&Bですからね!誤解なきように!)

これは音がパーンっと抜けてくる「EU盤」で是非いっていただきたい。思わず踊ってしまうから!バック宙も出来ちゃうから!

以上、捨て曲なし、怒涛の全11曲である。

さて、全曲出揃ったわけだが、読んで頂いて分かるとおり、
「EU盤」「US盤」どちらも良い点があり、甲乙つけがたいのだ。

ざっくり全体像を書くと、
「US盤」は音の重心が低く、図太い。イナたさや泥臭さ、
言い換えればブルージーな音がするのはこちらだ。

対して「EU盤」は音自体が立体的に聴こえる。バランスが良いのだろう。
ビートリーな曲やメロウな曲なんかはこちらの方が映える。
(あと、クラプトンのプレイが「よりクラプトンらしく」聴こえるのはこちらだと思う)

いつもの話になるが、こういう聴き比べが出来るのはやはりヴァイナルだからだ。
(CDにプレス国での音の差なんてあるか?)

自分の好きなアルバムが国によって音が違っている...
それもまったく別のニュアンスに変わっている。
じゃああの盤はどうなんだ?この盤は?ドノヴァンは?(ここ笑うとこよ)

あなたが本当に「音」を楽しみたいのなら
悪いことは言わない。ヴァイナルはその最短ルートだ!

さて、この「Cloud Nine」はジョージのどのアルバムよりビートリーなアルバムだ。
それはもちろん共同プロデューサーだったビートルズ大好き男、
ジェフ・リンの存在もあるだろうが、
それ以上にこの頃のジョージが自分がビートルズだったことを受け入れたのが大きいのではないかと思う。

「When We Was Fab」で当時の自分たちを「かっこよかったろ?」と言い切ったこと
(また、当時ビートルズを「Fab4」とメディアが呼んでいたから
「俺たちがFabだった頃…」というジョージならではのWミーニング)
にもそれは現れている。

そりゃそうさ、かっこいいよ、ジョージ!
あなたが私にビートルズを教えてくれたのだぁ!

...今回もまたハウってしまった。
そりゃそうだ。ジョージだもの!ビートルだもの!
次回も思う存分ハウる!盤がある限りハウる!

ハウリン・メガネでした。