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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,9) Cliff Richard『Me and my shadows』(3rd Album)

2025-02-23 10:59:30 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

前回、クリフ・リチャードの2ndアルバムを紹介する際、「まだまだ成長段階の記録」と書きました。(お読みで無い読者様は以下をどうぞ!)

https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/1dc372021a75436d40f0e38460259559

じゃあそもそも「これこそがクリフだ!」みたいな決定的な盤があるのか?という話になるのですが、なにしろ1958年デビューから2025年現在67年ものキャリアを誇る彼。スタジオアルバム(LP)だけでも50枚近くをリリースしているのですから、当然「決定的で良い盤」がいくつもあります!ただ、本コーナーはあくまでも、後のビートルズ等へ続く「ブリティッシュ・ビートの元祖」としての視点でクリフを紹介していますので、その時代の音楽の流れを時系列を踏まえて書いております。その上で言っても、確実に「クリフ・リチャードの決定版」と言えるのが、今日紹介する「Me and my shadows」です。「Me and my shadows」(UK Org MONO)

さてさて、1959年にヨーロッパ全土で記録的大ヒットとなったシングル「Living doll」により、超売れっ子シンガーとなったクリフですが、その後出したシングルもすべてイギリスで3位以上!相変わらず、向かうところ敵なしの絶頂期の中リリースされ、イギリスのチャートで2位を記録した盤が本作なのです。

その内容ですが、まずはタイトルに注目!「Me and my shadows」バックバンドのシャドウズの名前を敢えてタイトルに入れている!なぜだろう?レコードに針を落とし、ハンク・マーヴィンのジャックナイフのような鋭い切れ味のリードギターと共に始まるサウンドに酔いしれながら、裏ジャケットの各曲のクレジットに目を通すと、そこにはシャドウズのメンバーの名前が記載されているではありませんか!そう!このアルバムでは計6曲でシャドウズのメンバーがオリジナル曲を書いているのです!そして、「イギリス人最初のロックンロールソング」としてお馴染みクリフのデビューシングル「Move it」の作者であるイアン・サミュエルが4曲を提供!

つまり、この時点で非常にオリジナリティ溢れるアルバムに仕上がっているのです。これは僕の持論ですが、カントリーやブルースといったルーツミュージックが根付いたアメリカにおいては、その音楽をそのままプレイし、受け継いでいく土壌があるのだと思います。ですが、イギリス人からしたらそれは「海外の音楽」です。そこで、そのエッセンスを吸収しながら、「どうやってそこに変化をつけていくか」という事を。クリフやシャドウズ、裏方は意識していたのではないでしょうか。そのまま演奏したのではただのコピーになってしまいますからね。

たとえば、ブルースの基本的なコード進行(E-A-E-B7-A-E的なやつ)の中に、「ちょっと違うコードを入れてみよう」とか「進行を逆にしてみよう」とか「一回途中でブレイクしてギターリフを入れてみよう」そうやって、いかに「アメリカのルーツミュージックから変化を付けるか」というアイディアが、この時期のイギリスにおけるロックミュージックのポイントなのだと思います。ブルースやジャズ、カントリーへのリスペクトがあるからこそ、その路線から「抜け出せなかったアメリカ人」と、それらをすべてフラットに見て、純粋に「良い音楽を作り出そうとしたイギリス人」。1960年代初頭においては、その図式を強く感じさせます。

その最たる例が「ビートルズ」であることは言うまでも無いでしょう。その革新的サウンドがアメリカへと渡り、その後のアメリカのロックミュージックが盛り上がっていくわけですが、今回のアルバムがリリースされたのは1960年の10月ビートルズがデビューする2年も前のお話しなのです。そんな早い段階で、イギリスにおけるロックミュージックの礎が作られていたわけです。

クリフは1stアルバムでプレスリーやカール・パーキンスらの王道ロックンロールを演り、2ndアルバムでは、ちょっとカントリーに寄せながらシナトラ的ポピュラーミュージックに接近してみた・・・コレは裏方も含めた「チーム・クリフ・リチャード」の意向なのですが、それらを踏まえて、このアルバムでは、「自分達が出来る最善の音楽」に落ち着いた感じがあります。

クリフのボーカルも、誰かを真似ることはなく、いたってリラックスして歌っています。このアルバムにおける、彼の「敢えて声を張らない唱法」が、後のボーカルスタイルへと繋がっていきます。16曲と非常にボリュームのある曲数ですが、エレキギター主体の曲と、アコースティック主体の曲が入り交じっており、特にB面ではそれが顕著です。とにかくアコギのサウンドが美しい本アルバムですが、そこから徐々にベース、ドラム、エレキギタが加わりサウンドに変化をつけるアレンジは、小学生の時、初めて「ラバーソウル」を聴いた時の感覚を思い出しました。

後のブリティッシュビート勢は、デビュー前、間違いなくこのアルバムを聴いたことでしょう。後へ続くイギリスのロックミュージックの原点として、個人的にはこのアルバムを重要盤だと位置付けます!そして、純粋にシンプルな「グッドミュージック」として、このアルバムを皆さんにレコメンドしたい!そう強く思うスターマンであります!次回も続きますよ!お楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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