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『スターマン★アルチ 』訳『The Word/ROCKの言霊』 知らずに死ねるか!詞から紐解く名曲の数々 (5曲目) ブライアン・ウィルソン『Your imagination』

2024-08-31 09:45:05 | 『スターマン★アルチ 』Presents『The Word ~ROCKの言霊~』

お久しぶりです。『スターマン』改め『Starman★アルチ』です!
今回は夏の終わりにぴったりな、少しセンチメンタルな一曲をご紹介します。
ブライアン・ウィルソンが1998年に発表した一曲「Your imagination」です。
今回は純粋に、この一曲を聴いて、歌詞を味わってほしいので、
あえてミュージシャンに関する詳細な情報は書きません。
youtubeの公式チャンネルでも聴けるので、まずはぜひ聴いてみてください。

・・・・・いかがでしたでしょうか。
目を閉じると真夏の海辺の街並みやビーチが思い浮かぶような瑞々しいキーボードのイントロから始まり、そこから言葉が美しいメロディにのって流れ出ていきます。それでは歌詞と対訳をどうぞ!
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YOUR IMAGINATION
(Brian Wilson,Joe Thomas,Steve Dahl)

Another car running fast
Another song on the beach
I take a trip through the past
When summer's way out of reach

Another walk in the park
When I need something to do
And when I feel all alone
Sometimes I think about you

速く走る車がまた一台
ビーチで歌う歌がもう一曲
夏に手が届かなくなる時
僕は過去を巡る旅に出かける

何かやらなくちゃと思ったら
僕はまた公園を散歩してみる
孤独を感じた時は
時々君のことを考えてみる
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この曲のプロデューサーであるジョー・トーマス「音節ごとに作られており、歌詞と言うよりは子音の積み重ね」とインタビューで答えているのですが、「曲全体で一貫した意味を持つ歌詞」ではなく、一つ一つの情景描写が羅列されているように感じられます。ですので、まるで蒸し暑い夏の夜に見る夢のような幻想的な、突飛な表現が使われているのですが、僕は、それを読み進めると、どこかで自分が歩んできた「夏」の思い出と重なり合うような、そんな「心地よさ」があるように感じます。ここで歌われる主人公「僕」は、過ぎ去っていく夏を前に焦燥感に駆られ、公園を散歩したり、「君」のことを考えているのです。
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★You take my hand
 Smile and say you don't understand
 To look in your eyes
 And see what you feel
 And then realize that nothing's for real
 'Cause you know it's just
 Your imagination running wild

★君は僕の手を取って
 微笑みを浮かべ「理解できない」って言うんだ
 僕は君の瞳を覗き込み
 君が何を感じているか確かめようとする
 そしてその時、気付くんだ
 何も現実ではないことに

 だってそれは君の想像の出来事だって
 君の想像力はどんどん膨らんでいく
 君の想像力はどんどん膨らんでいく
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次のヴァースでの「僕」は、前節で「ただ思い焦がれているだけ」の「君」の手を握るというストレートな行動を取っていますが、ここに少し違和感があります。「君」の事を考えてるだけで何もできず公園をウロウロするだけの主人公ですから、もしそこで「行動を起こす」としたら、それをメインテーマにしたストレートなラブソングになろうものです。でも歌詞を読み進めると、「君」はただ笑って「分からないわ」というだけ。主人公は考えます。「あれ、おかしいな?これ本当に現実なのかな?」と思い、「君」の瞳を覗き込んだ瞬間に気付くんですね。「ああ、これは夢なんだ!」と。実際には、現実では何も起こっておらず、ただ「君」を思い焦がれるあまり、夢の中で手を握っただけ。何とも情けなく、切ない内容ですが、同じ経験をした人って少なからずいると思うんですよね。そういう自分の格好悪いところを捉えて、音楽にしたところに、この曲の凄さがあると僕は感じます。なんか田山花袋の「布団」に通じる部分を勝手に感じる僕です。
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Another bucket of sand
Another wave and the pier
I miss the way that I used
To call the shots around here
You know it would've been nice
If I had something to do
I took a trip through the past
And got to spend it with you

砂の入ったバケツがもう一つ
桟橋に当たる波がもう一つ
この辺りを僕がどうやって仕切っていたか
思い出すと懐かしいよ
やることをちゃんとやっていれば
もっと素敵なことになっていただろうね
僕は過去を巡る旅に出かけて
君と一緒に過ごすことにしたんだ
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次のヴァースでは、より鮮明な「夏の海」の背景が描かれています。その中で、今年の夏、怖気づいて何も行動を出来なかった主人公の後悔が歌われています。
「You know it would've been nice If I had something to do(やることをやっていたら、もっと素敵になっていただろうね」とは、誰にでも当てはまる共通のメッセージではないでしょうか?ここで「it would've been nice」といフレーズに引っかかったア・ナ・タは、かなりのロックファンでしょう!そう!何を隠そう、これは作者であるブライアン・ウィルソンが、かつて率いたアメリカの伝説的ロックバンド「ビーチ・ボーイズ」が1966年に発表した、ロック史に燦然と輝く大名盤「ペット・サウンズ」の一曲目を飾る名曲「Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)」のオマージュなんです!くぅ~。
はっ、ビーチ・ボーイズへの愛が強すぎて、つい冷静さを欠いてしまいました。申し訳ございません。
こんなに取り乱すようじゃ、まさに「駄目な僕」ですね。

さて、それはさておき、このヴァースの最後「僕は過去を巡る旅に出かけて、君と一緒に過ごすことにする」は、今までの文脈から考えると、明らかに「現実」の出来事ではなく、主人公が夢、あるいは妄想の中で膨らませている物だという事が分かります。要するに、この曲で歌われているストーリーを僕なりに解釈すると、「好きな女の子に対して怖気づいて行動できないまま夏が終わってしまった「僕」は、現実から逃げるように想像の世界で「君」と旅に出る」というものです。
いかがでしょうか?「ロック」からは程遠いような情けなく内省的なストーリーですが、だからこそ、共感する部分もあり、共感するからこそ、それを聴いた時に一歩踏み出すためのエネルギーになるのだ僕は思います。ロックには必ずしもワイルドではなく、あえて自分の格好悪い部分をさらけだすような楽曲が多くあります。だからこそ、作者の人間性が身近に感じられて、よりその音楽が「染みる」のだと思います。これからも、このコーナーでそんな音楽を沢山紹介していければと思います!お読み頂き、ありがとうございます!

《Starman★アルチ筆》

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