ゼロコロナ政策の正当な理由
中国では、ゼロコロナ政策に対する抗議デモが、全土で頻発している。3年近くの、強権的隔離政策に、市民が我慢できなくなったのだ。
しかし、中国には、ゼロコロナ政策をとらなければならない理由があるのだ。そのことを、西側メディアは一切無視している。
コロナウィルスの感染蔓延初期には、厳しい行動制限を採った欧米を始め、その他の国も、次第に緩やかな感染対策に移行した。しかし、その犠牲となったのは、例えば、人口3億3千万人のアメリカでの確認された死者数は、110万人に及ぶ。人口2億1千万人のブラジルで69万人、人口14億人のインドで53万人である。人口100万人当りの死者数では、ペルーが最も多く6453人、ついでにブルガリア5557人、ハンガリー5022人であり、アメリカでも3300人となっている。それに対し、ゼロコロナ政策を堅持している中国は、全人口で5233人、100万人当りで4人である。100万人当りでアメリカの825分の1に過ぎない。(以上、Our Wold Data2022/11/29による)
これらのデータは、公式のもので、Covid-19の関連死は、国よって異なり、多くの国で実際の死者数は、はるかに多いものと推定される。特に日本を含めた欧米先進国より、医療体制が劣るアフリカ、南アジア、南米では著しく異なり、その数は数倍に及ぶと考えられる。特に、インドでは、WHOによれば2021年末までに「少なくとも、400万人」と算定している(毎日新聞2022/4/28)。
中国の医療体制は脆弱
感染症Covid-19に対する対策には、行動制限と医療体制とワクチン接種率が重要なものとなるのは言うまでもない。しかし、中国の医療体制は、公表されないが、欧米先進国よりもはるかに脆弱なものと思われる。恐らく、東南アジア並み程度だと推定される。また、公的医療制度も強制加入の都市職工基本医療保険 と任意加入の都市・農村住民基本医療保険 と分かれており、未加入者もかなりの人数に及ぶと推定される。(この点は、アメリカも同様であり、医療保険未加入者の貧困層、非白人の死亡者の割合が異常に高い。100万人以上の死亡者を出した、一つ要因である。)さらには、医療費は、アメリカ以外の先進国と比べれば、はるかに高額なのである。
ワクチン接種では、延べ34億回実施されているが、60歳以上は86.42% 、80歳以上では65.8%しか接種されていない(中国国家衛生健康委 11/29)。さらに、中国製ワクチンは、欧米のmRNAワクチンと比べ、その効果は低く、オミクロン株に対しては、さらに弱い(香港研究チーム)と思われる。
欧米よりも厳格な行動制限をした国々の100万人当りの死亡数は少ない。行動制限に加え、健康アプリを市民に強制したシンガポール287人、今夏までゼロコロナ政策を維持した台湾598人、欧米と同様の生活習慣があるなかで、昨年までロックダウンを実施していたオーストラリア619人と、アメリカの3300人と比べれば、それは明らかである。
これらの国より中国は医療体制の脆弱であり、ワクチン接種が、特に重症化しやすい高齢者に思うようには進まないことを考えれば、中国指導部が選択したゼロコロナ政策は、正当な理由があると考えられる。
もし、中国指導部が経済を優先させ、欧米なみの行動制限しか採らなければ、14億人の中国では、インドや南米並みの数百万人の死亡者を出したのは間違いない。
はっきり言わなければならないが、人命の尊重という価値観から見れば、欧米はCovid-19の防疫に失敗したのである。
欧米のマネが正しいわけではない
それでも、WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアンが12月2日、中国が厳格な「ゼロコロナ」政策の緩和をさらに進める姿勢を示したことを「喜ばしい」と歓迎したように、非常に感染力が強いオミクロン株は、ゼロコロナ政策でいくら厳格な制限行動をしたとしても、それをすり抜け、感染者は増加する。それが、現在の中国の感染状況の現実である。ライアンは、同時に
重症化しやすい高齢者を守るなどの対応の重要性を強調したが、それが、「人命の尊重」への手段でもある。
Covid-19の防疫に失敗した欧米は、感染者の蔓延で多大な犠牲を出したが、その犠牲の上に、ワクチン接種による免疫に加え、多くの自然感染による免疫の獲得により、集団免疫獲得とまではいかないまでも、一定程度の社会的免疫ができたと言える。それに比べ、中国、日本を含む東アジア、オセアニア地域は、そこまでの免疫は獲得していない。その差が、欧米との対Covid-19政策の違いでもある。何でもかんでも、欧米のマネが正しいわけではないのである。