フランス公共放送フランス2の9月19日20時のニュース
<多くのウクライナ人が前線へ送られるのを避けるために国外へ逃亡しようとしている。>
<銃を持ち警備しているのは、ウクライナとルーマニア国境の国境警備隊。
ウクライナは18歳から60歳までの個人が特別な許可なしに出国を禁止しているが、彼らは国外に逃亡しようとする男性を1日平均30人追跡している。「逮捕すると、前線に行きたくないことを認める人もいれば、海外にいる家族と合流したいと言う人もいます」と若い警備隊員は打ち明ける。>
<無駄に死ぬのか?
逮捕された男性には200ユーロの罰金が科せられ、動員可能な男性のリスト(優先的に前線に送られる)に載ることになる。不法横断は実際のビジネスを生み出しており、1回の横断につき仲介業者に2,500~10,000ユーロが支払われる。フランス2チームは30歳の医師に出会った。戦争が始まったとき、彼は前線に行く準備ができていました。今日、彼は何としてでもこの状況から逃れたいと考えています。「このシステムを観察して考えが変わりました。塹壕で腕や足を失うような可哀想な人の一人にはなりたくないです」と彼は語った。 >
フランス2は、ウクライナでは、国中に「国のために戦え」という看板と、亡くなった兵士を英雄として称える大きな遺影の看板で溢れている光景を映し出す。
ナレーションは、ウクライナ人の成人男性は、否応なしに徴兵され、前線で死亡または、重症を負う。その前線に送るための徴兵を担当する部局の人間は嫌われ、そこでは徴兵逃れの汚職が蔓延し、担当部局は解任が相次いでいる、という。
フランス公共放送らしいニュース
フランス公共放送フランス2は、2022年夏、西側のメディアで初めてドンパスの親ロ派支配地域に取材班を入れ、そこに住む住民の声を報道した。住民は、ロシアを味方と信じている者、ロシア軍や親ロ派武装勢力に隠れてロシアを非難する者に分かれていたが、「どちらが勝とうが、とにかく戦争はやめて欲しい」という者も多数いたことを報道した。恐らく、これが親ロ派支配地域の住民の本音だろう。そこで取材していたロシア以外の他の外国メディアでは、中国メディアしかいなかったのだが、西側メディアでは、その後もフランス2以外ではほとんど報道されない。勿論、その報道は西側に都合の悪い「真実」を映し出すからである。
世界各国の公共放送は、その国の政治的状況から無縁ではない。英国BBCの国際関係ニュースは親米色が濃く、日本のNHKは、単なる日本政府広報のようものになっている。それは、特に国際関係での最大の問題であるロシアのウクライナ侵攻での扱いで、それぞれの国はそれぞれの政治状況を色濃く反映し、報道される。
その中でもフランス公共放送は、大統領のマクロンが2023年3月、「フランスはアメリカの同盟国だが、それはアメリカの属国であることを意味しない」と発言した。フランス公共放送は、国際関係ニュースでは、この発言を反映するかのように、アメリカ一辺倒の報道はしない。それが、ウクライナの徴兵逃れの実態を報道する姿勢にも現れている。
誰も死にたくないし、傷つきたくもない。誰も殺したくはない。
ロシアの徴兵逃れで多くの人が海外逃亡を図っているニュースは、西側メディアでは度々報道される。ウクライナに無理やり送られ、そこで、死にたくもないし、傷つきたくもない、そして誰も殺したくはないからだ。だが、それはロシア人だけでなく、ウクライナ人も同じだろう。
ウクライナでは、成人男性は徴兵から逃れることはできない。公に反対すれば、ロシアの手先として逮捕される。
2023年8月、ウクライナ平和主義運動事務局長ユリー・シェリアジェンコ
が当局に「ロシアの侵略を正当化する」として逮捕された。
国際反戦組織World Beyond Warのニュースサイトより
勿論、戦争に反対し逮捕されるのは、圧倒的ロシア側に多い。しかし、ウクライナ側にも、戦争に反対し、交渉を優先すべき、という意見を持つ者もいるのである。
ゼレンスキーは、国連でロシアの侵略を非難し、軍事支援を要請している。しかし、ウクライナ人はすべてゼレンスキーと同じ気持ち、ではないのである。